ベンチマークの構造と見えないコスト
なんとなく会社の帰り道に思い出した、2年半くらい前のベンチマークイベント。以下を読んで、面白い!!と思えた方は、是非今度酒を酌み交わしましょう。
思い出しながら書いているので、細部のディテールが異なっている場合はご容赦下さいあと、用語は意図的に平易にしているので、それは合併じゃなくて完全子会社化だろうとか、そういうツッコミもご容赦下さい。(マニアックすぎるな・・・。)
■TOPIXのベンチマーク変更ルール
・東証2部⇒1部に指定変更があった場合、その銘柄は指定日の翌月末にTOPIX組み入れとなる。例えば、1/20に東証2部から1部にステップアップした銘柄は、2月末まではTOPIX外の東証1部銘柄となる。これは、1部で流通し始めてから1か月ほどインデックスファンドへ購入の猶予期間を与え、需給の逼迫を避けることが目的。
・合併による株式交換でA社が上場廃止になる場合(要は倒産などではなく、コーポレートアクションで上場廃止になるような場合)は、その銘柄は上場廃止日にTOPIXから除外。ちなみに倒産などの場合は、しばらく整理ポストで売買された後上場廃止となるが、ベンチマークからは上場廃止を待たずに早々に除外される。
■事態
・A社(東証1部)がB社(東証2部)に吸収合併されるため、8月末で上場廃止。上場廃止とほぼ同タイミングで、A社株主には親会社であるB社株が一定の交換比率で割り当てられる。
・TOPIX採用銘柄のA社を保有していたインデックスファンドには、採用外のB社株が割り当てられる。ベンチマーク外なので、素直に考えるとB社株は売却しなければならない。
・東証は合併の1か月後の9月末にB社を東証2部から1部に指定変更する旨を発表。(東証1部銘柄と2部銘柄が合併したのだから、規模的には1部銘柄の条件は満たしているので、これ自体は妥当な判断。)
・そして、B社のTOPIX組み入れは、9月末に実施する旨も同時に発表。
・・・当時若かった私は、引け後の夕下がりにこのリリースを見て、思わず「バッカじゃねえの」と呟いてしまった。若気の至りである。
この変更方法だと、忠実にベンチマークにトラックするためには、8月末に株式交換でB社株を割り当てられたら速やかに一旦売却し、1か月後のTOPIX組み入れ日に再び買い戻す、というオペレーションを実施することになってしまう。
最終的には保有しなければならない銘柄を、ベンチマークのテクニカルな調整のためにわざわざ反対売買しなければならない。売買すれば、当然売買手数料は取られるわ、Ask-Bidは抜かれるわ、マーケットインパクトはかかるわで、コストがかかる。
売買回転率を極力抑えてコストを抑制するのは、インデックスファンドに求められる主要な努力だ。そのインデックスファンドのベンチマークとして利用することを想定しているTOPIXのような指数も、当然回転率を抑制するように設計されて然るべきだと思うのだが、なんとなく「1部指定のときは1か月開ける」という前例を踏襲してしまったようなのだ。
小さな銘柄だったと記憶しているので、継続保有しようが反対売買しようが経済効果としては大した違いはなかったと思うが、こうしたベンチマークに追従するための売買はタイミングがまるわかりなので、投機の格好の餌食になってしまうというデメリットもある。そのため、影響の大小はさておき、こうしたベンチマークの変更方法については神経を尖らせておく必要がある。
尚、東証の担当方の名誉のために付け加えておくと、上のケースは2部の会社が1部の会社を吸収するという非常にレアなケースであり、ああいうちょっとお役所的な組織ではいろいろしがらみも多く、苦肉の策であったであろうことが推測される。
ちなみに、多分当時結構問い合わせ・苦情その他があったのだろう(私も東証に問い合わせの電話をしました)、今は改善されてこういった変更はしない筈である。
インデックスファンドへの投資というと、どうしても信託報酬などのコストに目が行きがちではあるが、そもそもファンドがトラックする対象のベンチマークの設計次第で、経済効果はかなり違いが出てくる。信託報酬のように直接見えるコストではないため意識しにくいが、こうした見えないコストも長期で見るとかなり運用のパフォーマンスに影響を与える。
このベンチマークの構造とみえないコストについては、色々な事例があり実証研究もあったりするので、また機会を見つけて考えてみたいと思う。
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