リターンリバーサルとランダムウォーク(2)
(前回の続き)
アルゴが普及する以前でも、前述のような執行方法は人の手によって取られているのだが、私は正直なところ、この方法を聞くたびに違和感を感じてしまう。この執行手法は、以下のような前提を置いているからだ。
・マーケットが前日比で高く始まった場合は、その反動で株価が下がる。
⇒だから執行を後ろに伸ばす。
・マーケットが前日比で安く始まった場合は、その反動で株価が上がる。
⇒だから執行を前倒しにする。
要は短期的な株価変動にリターンリバーサルの前提を置いているのだ。株価にリターンリバーサルの傾向があることを一概に否定はしないのだが、それってちゃんとデータで検証してた上で前提に置いてるんでしたっけ?という疑問と、そもそもインデックスファンドの運用哲学と、リターン・リバーサルを前提とすることって整合的でしたっけ?という疑問を抱いてしまう。短期の株価変動を説明する理屈としては、
・リターンリバーサル。株価は波打ち、平均回帰的に変動する傾向がある。
・ランダムウォーク。株価変動はランダムであり、過去の値動きと将来の値動きは独立である。
という二種類がある。どちらが正しいとか正しくないとかいう議論は神学論争になるので触れないが、少なくともインデックス運用の哲学というのは、以下のようなものだった筈。
・マーケットタイミングを取ることは不可能。そのため、手数料やインパクトコストといった合理的な努力で抑制可能なコストを抑え、できる限り相場に長く留まり、株式の長期のリスクプレミアムを享受すべき。
要はインデックス運用の哲学はランダムウォーク派と親和的なので、インパクトコストがかからない範囲で、極力速やかにポジション構築を完了させ、キャッシュを寝かせておくことで発生する機会コストを最小化するのが合理的な判断の筈だ。
これと同様の理由で、私はドルコスト平均法もどうしても好きになれない。
ちなみに、ISが上記のようになっているのは、こんな理屈っぽい理由ではなく、以下のような①②のような不幸なケースが発生した場合、まだ②の方が「分散執行しました」と顧客説明がし易い、という理由も大きいと思う。
①高く始まった寄付で一気に購入した後、マーケットが下落して、その日の高値で一点買い。
②寄付が高く始まったので、1日かけて分散執行した。結果、日中も株価は上昇し続け、結果として寄付直後で買った方が傷は浅かった。
個人的に私は、戦略や哲学がしっかりと練れていれば、戦術はシンプルに表現できる。凝った戦術が必要なケースというのは、戦略立案段階で失敗している証だ。戦術で凝るのは局所最適でしかない、と考える傾向がある。
サラリーマン(特に若手)は、大上段に振りかぶって、正論だが身も蓋もないことを言うより、与えられた権限の範囲内でディテールにこだわって仕事をした方が評価される傾向があると思うので、私のこの傾向はサラリーマンファンドマネージャーとしては明らかにマイナスだと思う。
ただ、成人してからだとこういう根本的な性質は変わらない・・・ので、こういう傾向が活きる場なり職種なりを探すことの方が建設的なんだろう、と思っている。
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