« 2009年3月 | トップページ | 2009年6月 »

2009年4月

小型・バリュー・逆張り

第三世代インデックスのエントリーで取り上げた「ファンダメンタルインデックス」と「最小分散ポートフォリオ」だが、この二つはポート構築の哲学は「リスク最小化」と「企業価値重視」と全く異なっているものの、最終的に構築されるポートフォリオには一つの共通点がある。これは個人的には非常に興味深いと思う。

その共通点とは、時価総額加重型のインデックスよりも、「小型・バリュー・逆張り」にティルトしている、という点だ。

こうした特性を持つ銘柄群で構築されたポートのリスク・リターン効率が良い理論的な根拠として、行動ファイナンスの見地から以下のような説明がなされているのを見つけた。ファンダメンタルインデックスと最小分散ポートフォリオが共通の特性を有することの一つの説明になると思う。詳細はリンクを参照。

①若い企業、利益が上がっていない企業、極端なグロース企業
⇒投資家はこれらの企業に対してばらつきの多い評価をするため、裁定が働かない。結果、高ボラティリティ、市場時価がファンダメンタル価値から乖離、という現象が生じる。

②過去の業績に関する長い履歴と有形資産を持ち、安定配当の企業
⇒評価の主観性の程度が低く、投機性向の変動の影響を受けにくい。結果裁定が働き、市場時価とファンダメンタル価値が乖離せず、低ボラティリティとなる。

■引用)行動経済学会 研究報告予稿 最小分散ポートフォリオのリスクとリターン
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/abef/event/20081221/yokou_hpup/no5.ishibe_revised.yokou081121.pdf

尚、やや主観が入るが、典型的な定性アクティブのファンドは、グロースよりのものが多いように思う。(バリューファンドと銘打っていても、組み入れ銘柄を見ると、これってグロース銘柄じゃ・・・と思う銘柄が多数見受けられるケースも多い。)

これはグロース系の銘柄の方が市場参加者の注目度も高いため、リサーチが手に入りやすい、という理由もあると思うが、加えて以下のような理由もあるのではないかと推測する。

・年金運用や投信では長期投資と銘打ってはいるものの、実際は短期でのパフォーマンスで評価されがち。そのため、ボラの高い上記①の銘柄群の方が、比較的短期間でリターンを実現できる(ように少なくともアクティブFMには見える)。

・投資家の予想にばらつきがあり、裁定が働いていない①の銘柄群の方が、自分の相場観・リサーチで付加価値をつけやすい(基本、アクティブFMは自分は大多数の投資家よりも優れていると考えている)。②の銘柄群はリターン実現まで時間がかかるし、特に自分独自の判断を必要とされる訳ではないので、退屈。

やや悪意を持って解釈すると(笑)、①の銘柄は自信過剰の有象無象の投資家達が群がっていじりまくっているのでリスク・リターンの効率が悪いので、長期投資の対象としては②の銘柄群の方が優れている、となる。そういえば、バフェットなどの世のバリュー投資の大家が好む銘柄も②のカテゴリーに属している。

そう考えると、時価総額加重型インデックス vs 第三世代インデックスという対立の構図は、グロース vs バリューという古典的な対立の構図の形を変えたものに過ぎないのかも知れない。

バリューの方が安定的にリターンを積み上げられるが、一発当たった時のリターンはグロースの方が大きいので夢がある・・・。どちらがいいのかという議論は神学論争になるので止めておこう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第三世代インデックス

インデックス運用は、幅広い銘柄に分散投資して、特定の市場全体のリターンを教授する投資手法なので、都度、個別銘柄単位での投資判断は実施しない、というのが建前だ。投資判断は、都度実施するのではなく、インデックス運用開始時のベンチマーク選択時にまとめて判断を実施し、その後は当初の判断を信じて、粛々と運用コストの抑制に努める、というのが正確だろうか。

ベンチマークの選択は戦略的には非常に重要な投資判断であり、本格的に実施しようとすると非常に奥の深い、やりがいのある仕事だと個人的には思う。ただし、以下のような理由で、いちファンドマネージャーにとっては魅力的な仕事とは言い難いかも知れない。

・ベンチマーク選択は顧客の判断で実施するものであり、ファンドマネージャーに裁量はない。(複数のベンチマークの特性を分析して、顧客に提案することはある。所謂、ベンチマークコンサルティングというものだ。)
・ベンチマーク選択の巧拙の判断は長い時間を経ないと分からない。また、個別銘柄の選定のように、他者の知らない情報を知っていることを付加価値の源泉とすることもできない。そのため、どうしても過去のデータを机上でいじって数字を作り、最終的には「哲学」やら「相場観」といった抽象的なものを拠り所として判断を下さざるを得ない。要は、明確な答えのない分野である。そのため、顧客の資産全体への寄与は大きいものの、運用会社が付加価値をつけることが難しい。(この辺の事情は、アセットアロケーションに通じるものがあると思う。)

大半のインデックス運用は、個別銘柄の時価総額に応じて組み入れウェイトを決定する「時価総額加重型」だが、その他にも、「ファンダメンタルインデックス」、「最小分散ポートフォリオ」等のウェイト決定の哲学が異なるインデックス運用も存在する。

検索すれば詳しい解説は見つかると思うので詳細な解説はしないが、これらのインデックス運用の哲学は以下のようなものだ。

・ファンダメンタルインデックス:
個別銘柄のウェイトは、売上・利益・キャッシュフローといったファンダメンタルな指標によって決定する。時価総額加重のインデックスの場合、市場で割高に評価されている銘柄を多く組み入れ、割安に評価されている銘柄を少なく組み入れてしまうという問題が発生する。そのため、ファンダメンタルな企業価値でウェイトを決定することにより、バリュー投資のような効果が発生し、時価総額加重型のインデックスよりも長期的なリターンが大きくなる。

・最小分散ポートフォリオ:
時価総額加重型インデックスの場合、リスク・リターンが最適化されていない(CAPMで言うところの効率的フロンティアの内側に存在している)。そのため、ヒストリカルなデータからリスクを算出し、全体のリスクを最小化するようにポートフォリオを構築すれば、リスク・リターンの効率が向上するという考え方。アメリカ市場での長期のデータを使用した実証研究では、時価総額加重型よりもリスクは低く、リターンは高いという結果が出ているとのこと。

実証研究で時価総額加重型よりも運用効率が高いことが示されているのであれば、上記哲学のインデックス運用に切り替えればいいじゃん、というのが素朴な感想ではあるが、上記手法(第三世代インデックスと呼ばれているとかいないとか・・・)には、実務に適用する上では以下のような問題点が存在する。

・売買回転率が高い。一言で言ってしまうと、ウェイト計算で複雑なことをしているので、頻繁にポートフォリオを調整する必要があるので、売買量が上昇する。日本市場での実証研究では、ファンダメンタルインデックスの場合、ITバブルの頃のように企業の業績変動が激しい時期には、インデックスの片道の年間売買回転率は50%を超えることもあるという。これは、1年間でインデックス全体の時価総額と同額の売買が発生するということだ。売買コストの見積もりは難しいが、例えば証券会社への手数料が10bp、執行時のマーケットインパクトコストを40bpと見積もると、年間でファンドのパフォーマンスが50bpも押し下げられることになる。机上でのシミュレーションでは時価総額加重型よりもパフォーマンスが良いと思っていたら、いざ実際に運用すると売買コスト考慮後ではパフォーマンスは負けてしまいました・・・という事態は十分に想定される。

他にも、マニアックなベンチマークを採用すると他社と横比較しにくい、ベンチマークのメンテナンスにノウハウが必要でコストがかかる(でもインデックス運用なのでフィーはそんなに貰えない)、といったデメリットもある。

上記のような癖の強いインデックス運用は、メリット/デメリットがはっきりしており、ビジネスラインには乗りにくい。ただ、こうした個性的なコンセプトを前面に押し出したインデックス運用が増えることは、ファンドマネージャーとしてはノウハウの蓄積に繋がるし、顧客にとっても商品の選択肢の幅が広がることになるため、望ましい傾向だと考えている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

株価指数とベンチマーク

こうした経済状況だと、当然のことながら倒産する会社が増える。株式のインデックスファンドは最適化法で極端にユニバースを絞り込んでいない限りは、通常千数百もの銘柄を保有しているので、当然、その中から一社や二社倒産銘柄が発生するのは当然だ。

特に、国内株でTOPIXをベンチマークとしている場合、東証一部全銘柄が組み入れ対象となっているため、2009年3月末時点で組み入れ銘柄数は1710銘柄と他の株式ベンチマークと比較して明らかに多い。

インデックスファンドのベンチマークとして開発された、国内株のラッセル野村プライムだと銘柄数が増加しないよう指数構築ルールが定められているので、ほぼ1000銘柄前後で安定しているし、外国株のMSCI_KOKUSAIの場合でも、3月末時点で大体1300銘柄強といったところだ。

これは、もともとTOPIXは「ベンチマーク」として開発されたものではなく、「株価指数」として開発されたものをインデックスファンドのベンチマークとして事後的に使用するようになったため、適切な銘柄除外のルールが整備されていない、という理由による。

「株価指数」と「ベンチマーク」の違いとは何か、ざっと整理すると以下のようになる。

■株価指数:
ある特定の国や業種の株式全体の動向を表現するための指標。あるカテゴリーの動向を適切に反映する必要があるため、「市場代表性」を重視する。つまり、できる限り網羅的に銘柄を組み入れ、コーポレートアクションに伴う流通株数の変化は、極力リアルタイムで指数に反映する必要がある。

■ベンチマーク:
インデックスファンドがトラックする対象となるため、「市場代表性」と「再現性」をバランス良く兼ね備えている必要がある。この二つの概念はトレードオフの関係にある。銘柄数を増やした方が市場代表性は向上するが、ファンドの管理コストが上がり、再現性は低下する。また、ベンチマークの変更を頻繁に実施すると、市場代表性は向上するが、ファンドの売買回転率が増加し、売買コストがパフォーマンスを圧迫することになる。

指数ビジネスは最大手がシェアを独占する類のビジネスだが、最もメジャーな指数が必ずしも品質が高いわけではない点が面白いところだ。例えば国内株の場合、TOPIXよりも後発のラッセル野村プライムなどの方が、ベンチマークとしては明らかに練れている。

更に、ベンチマークについて考える際には、上記の対立の他に、構築方式が「ルール方式」か「コミッティ方式」かという対立がある。違いは以下の通り。この二つも、基本的に対立概念だ。

■ルール方式:
事前に指数構築方法のかなり細かい部分まで定量的にルール化して、実運営では予め定められたルールに則ってデジタルにリバランスを行う。「透明性」「一貫性」に秀でる反面、個別に事態に対処するわけではないので、「柔軟性」に難がある。また、透明性が高いことの裏返しとして、指数のリバランス内容が事前に推測可能なので、投機筋に先回りされてリバランス時のアノマリーが発生しやすい。

■コミッティ方式:
ルールは、指数構築の原理原則を定めるにとどめ、細かなプロセスまではルール化しない。リバランス内容は、経験豊富な有識者が都度、原理原則に則って決定する。密室での決定となるため、透明性に難があり、またコミッティのメンバーの入れ替えによりポリシーがぶれるリスクがあるので、一貫性にも問題を孕む。しかし、個別のコーポレートアクションに柔軟に対処できる、投機筋のターゲットになりにくい、というメリットがある。

国内株の場合、ラッセル野村は前者、S&PJapan500は後者、TOPIXは両社の中間、というイメージだ。

このように、銘柄数が多いということはメリット・デメリットがあり、必ずしも悪いわけではないのだが、こうした倒産銘柄が多い現状だと、デメリットが際立ってしまう。日本特有の現象だという話を聞いたことがあるが、日本の年金顧客は、保有銘柄が倒産することを非常に嫌がる傾向がある。

私はキャリアが浅い頃は、

・倒産懸念がある銘柄は、潰れたら価値は0だが、もし業績が持ち直した場合は通常の銘柄よりも良いリターンとなる。そのため、倒産懸念銘柄をポートから排除することは、倒産リスクを排除できるものの、復活時のリターンを享受することを放棄することに繋がる。そのため、倒産銘柄を保有していたか否かという点にこだわるよりも、ファンドトータルでのリターンを最大化することに注力する方が経済合理的だ。

・・・などと考えて、倒産銘柄保有をやたらと気にするシニア連中を冷やかな目で見ていたのだが、そう単純な話でもないようなのだ。

長くなるので、倒産銘柄については別途書くことにする。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2009年3月 | トップページ | 2009年6月 »