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第三世代インデックス

インデックス運用は、幅広い銘柄に分散投資して、特定の市場全体のリターンを教授する投資手法なので、都度、個別銘柄単位での投資判断は実施しない、というのが建前だ。投資判断は、都度実施するのではなく、インデックス運用開始時のベンチマーク選択時にまとめて判断を実施し、その後は当初の判断を信じて、粛々と運用コストの抑制に努める、というのが正確だろうか。

ベンチマークの選択は戦略的には非常に重要な投資判断であり、本格的に実施しようとすると非常に奥の深い、やりがいのある仕事だと個人的には思う。ただし、以下のような理由で、いちファンドマネージャーにとっては魅力的な仕事とは言い難いかも知れない。

・ベンチマーク選択は顧客の判断で実施するものであり、ファンドマネージャーに裁量はない。(複数のベンチマークの特性を分析して、顧客に提案することはある。所謂、ベンチマークコンサルティングというものだ。)
・ベンチマーク選択の巧拙の判断は長い時間を経ないと分からない。また、個別銘柄の選定のように、他者の知らない情報を知っていることを付加価値の源泉とすることもできない。そのため、どうしても過去のデータを机上でいじって数字を作り、最終的には「哲学」やら「相場観」といった抽象的なものを拠り所として判断を下さざるを得ない。要は、明確な答えのない分野である。そのため、顧客の資産全体への寄与は大きいものの、運用会社が付加価値をつけることが難しい。(この辺の事情は、アセットアロケーションに通じるものがあると思う。)

大半のインデックス運用は、個別銘柄の時価総額に応じて組み入れウェイトを決定する「時価総額加重型」だが、その他にも、「ファンダメンタルインデックス」、「最小分散ポートフォリオ」等のウェイト決定の哲学が異なるインデックス運用も存在する。

検索すれば詳しい解説は見つかると思うので詳細な解説はしないが、これらのインデックス運用の哲学は以下のようなものだ。

・ファンダメンタルインデックス:
個別銘柄のウェイトは、売上・利益・キャッシュフローといったファンダメンタルな指標によって決定する。時価総額加重のインデックスの場合、市場で割高に評価されている銘柄を多く組み入れ、割安に評価されている銘柄を少なく組み入れてしまうという問題が発生する。そのため、ファンダメンタルな企業価値でウェイトを決定することにより、バリュー投資のような効果が発生し、時価総額加重型のインデックスよりも長期的なリターンが大きくなる。

・最小分散ポートフォリオ:
時価総額加重型インデックスの場合、リスク・リターンが最適化されていない(CAPMで言うところの効率的フロンティアの内側に存在している)。そのため、ヒストリカルなデータからリスクを算出し、全体のリスクを最小化するようにポートフォリオを構築すれば、リスク・リターンの効率が向上するという考え方。アメリカ市場での長期のデータを使用した実証研究では、時価総額加重型よりもリスクは低く、リターンは高いという結果が出ているとのこと。

実証研究で時価総額加重型よりも運用効率が高いことが示されているのであれば、上記哲学のインデックス運用に切り替えればいいじゃん、というのが素朴な感想ではあるが、上記手法(第三世代インデックスと呼ばれているとかいないとか・・・)には、実務に適用する上では以下のような問題点が存在する。

・売買回転率が高い。一言で言ってしまうと、ウェイト計算で複雑なことをしているので、頻繁にポートフォリオを調整する必要があるので、売買量が上昇する。日本市場での実証研究では、ファンダメンタルインデックスの場合、ITバブルの頃のように企業の業績変動が激しい時期には、インデックスの片道の年間売買回転率は50%を超えることもあるという。これは、1年間でインデックス全体の時価総額と同額の売買が発生するということだ。売買コストの見積もりは難しいが、例えば証券会社への手数料が10bp、執行時のマーケットインパクトコストを40bpと見積もると、年間でファンドのパフォーマンスが50bpも押し下げられることになる。机上でのシミュレーションでは時価総額加重型よりもパフォーマンスが良いと思っていたら、いざ実際に運用すると売買コスト考慮後ではパフォーマンスは負けてしまいました・・・という事態は十分に想定される。

他にも、マニアックなベンチマークを採用すると他社と横比較しにくい、ベンチマークのメンテナンスにノウハウが必要でコストがかかる(でもインデックス運用なのでフィーはそんなに貰えない)、といったデメリットもある。

上記のような癖の強いインデックス運用は、メリット/デメリットがはっきりしており、ビジネスラインには乗りにくい。ただ、こうした個性的なコンセプトを前面に押し出したインデックス運用が増えることは、ファンドマネージャーとしてはノウハウの蓄積に繋がるし、顧客にとっても商品の選択肢の幅が広がることになるため、望ましい傾向だと考えている。

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