金融ビジネス

若いうちは株式を、年老いてからは債券を買いましょう(2)

資産運用の観点からすると、ABO=年金負債としてヘッジを行う場合は金利変動をヘッジすればよいが、PBO=年金負債と考えると、金利変動・賃金変動の二つの変動をヘッジする必要がある、ということのようだ。次に、ABO、PBOそれぞれをヘッジする方法を考えてみる。

①ABOをヘッジする場合
金利スワップを使用して金利変動をヘッジする、長期債の組み入れ比率を増やす等、要は金利にリンクした資産の保有を増やすことでヘッジが可能。技術的なディテールはさておき、このケースの基本的な考え方は直感的に理解しやすいだろう。

②PBOをヘッジする場合
金利変動と賃金上昇の両方をヘッジする必要があるため、このケースは①よりもやや複雑になる。賃金上昇はさらに、インフレによる上昇と、実質賃金の上昇の二つに分解できるので、金利変動、インフレ、実質賃金上昇の三つを同時にヘッジする必要があるわけだ。一般的に、インフレと実質賃金上昇のヘッジに適した資産は株式だ。

日本では経済成長もピークを過ぎて、インフレを懸念する必要はない、また企業の生産性も頭打ちなので、今後懸念するほど実質賃金の上昇は発生しない、というような尖った予想をするのであれば、金利リスクだけヘッジしておけばよい。

ただ、現実的に考えると、PBOをヘッジする場合は、株式の組み入れ比率を下げるのは危険が伴う。実際の企業年金を考えた場合、加入者の平均年齢が若い場合は、よりインフレ・実質賃金上昇のリスクに晒されることになり、一方で加入者が高齢化している場合は、債務のうち確定している部分が大きいため、金利変動が主なリスク要因となる。

と、ここまで考えると、LDIといっても、確かに技術的には従来の手法と比較して洗練されているのかも知れないが(悪く言えば複雑で分かりにくくなっている)、本質的には、「リスクの取れる若いうちは株式を多めに、高齢化してリスク許容度が低下したら債券への配分を増やしましょう」という、退屈な(だが的を射ているのだろう)原理原則と同じことを言っているだけと考えることもできる。

予定利回りを定めて、その予定利回りをリターンのターゲットとして、平均分散法で最もリスク・リターンの効率の良い資産配分を決定する、という従来のポートフォリオ構築方法から、LDI風の構築方法に変更した場合、概ね、以下のどちらかのパターンに陥る気がする。

・デリバティブを使用せずに、債券の組み入れ比率を増やした場合、インフレ・実質賃金上昇のリスクに晒されてしまう。
・デリバティブを使用して金利リスクをヘッジし、余剰資産を積極運用とした場合、株式のエクスポージャーは落とさずに済むのかも知れないが、ヘッジコストがかかる。試算した訳ではないので完全に推測だが、こういうケースは大概コスト負けしてしまうのが世の常である。

こう考えると、現状の良くも悪くも古典的な基本ポートフォリオが、実はヘッジ面でもコスト面でもバランスが取れている、という皮肉な結論になりはしないだろうか?

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若いうちは株式を、年老いてからは債券を買いましょう(1)

LDIのエントリで、年金負債をヘッジするとさらっと記載したが、そもそも年金負債とはどのように算出するのだろうか。LDIについて考え始めたものの、年金制度に関する知識があまりに無いことに気づき、やっつけ仕事ながら少し調べてみた。

LDIに関するドキュメントを読んでいると、ABO・PBOという概念が出てくる。その定義は以下のようなものだ。

(1)予測給付債務(Projected Benefit Obligation:PBO)
予測給付債務とは、退職金制度に基づき、従業員の現在時点までの勤務期間に割り当てられた給付額について、制度が存続することを前提に、かつ予測される将来の事象(昇給、退職、死亡を含む)が生じる見込みを反映して算定された数理的現価をいいます。

(2)累積給付債務(Accumulated Benefit Obligation:ABO)
累積給付債務とは、PBOのうち、将来の昇給分を見込まない前提で算定された数理的現価をいいます。

(税務会計情報ねっ島・TabisLandより抜粋)
http://www.tabisland.ne.jp/explain/kaikei/kaik_3_1.htm

日本とアメリカでは会計制度が異なるため、細かな定義は国によって異なっているようだか、このエントリの目的は負債の定義が資産運用に与える影響を考えることなので、敢えて強引に以下の様に簡略化してみる。

・年金とは、退職時の給料が高ければ高いほど、また勤続年数が長ければ長いほど多く貰える。そのため、加入者一人当たりの年金負債額は、給料×勤続年数に比例する。
・ABOは、現在の給料×現在までの勤続年数、で決まる。
・PBOは、退職時に到達しているであろう給料×現在までの勤続年数、で決まる。
・ABOの場合、現在の給料も、現在までの勤続年数も確定している。そのため、負債の現在価値を求める場合は、割引率として使用する金利変動のみがリスク要因となる。
・PBOの場合、退職時の給料は現時点では確定していない。そのため、賃金上昇率と金利変動がリスク要因となる。

(続く)

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再び、確信を持って何もしないという戦略(3)

相場下落時には下方リスク抑制の戦略を取り、相場転換時には戦略を変えてアップサイドを取りに行く、というのが理想だろう。

ただ、未だかつてそうした戦略が長期で有効に機能した事例にお目にかかったことがないので、この二つはトレードオフの関係にあると考える方が現実的だと思う。

LDIの話とも関係するのだが、年金基金はその性質上、長期投資と言いつつも、短期でのマイナスリターンを極力避けたい、という意識を強く持つ。また、行動ファイナンスあたりで良く言われることだが、人間には損失回避的な傾向がある。

こうした事情があるので、下方リスク抑制を止めろという気はないのだが、今下方リスク抑制の手法を検討することは、以下のような悪循環に陥る懸念がある。

①相場下落で運用資産のダメージが大きいので、下方リスクを抑制したポート構築を検討。  
②組織運用なので機動的な変更が困難。ステークホルダー間の調整が終わり、ようやく変更が実現する頃には、相場はそろそろ回復局面に。
③保守的なポートのまま、上昇相場に突入。アップサイドのリターンが十分取れない。相場下落時に負けているので、この局面で少しでも取り戻さないと、と焦る。
④相場のピーク近辺で、今度はアグレッシブなポートに変更。その後相場は下落し、①に戻る。

個人も組織も、一度悪循環に陥ってしまうとそこから抜け出すのはなかなか難しい。個人的には、以下の理由で、一番伝統的でシンプルな政策アセットミックス決定方法を維持することが、他の選択肢より傷が浅いのではないかと思っている。

・市場環境に合わせて機動的に意思決定をしようとすると、大きな組織/公共性の高い組織は後手に回る可能性が高い。
・複雑なことをしたり、頻繁に手法を変えると、コストは確実に上昇する。

年金運用のような守りのビジネスでは、積極的にベストな選択をしようとすると間違える。他の選択肢よりも幾分マシなものを選ぼう、という受け身の姿勢の方が、余計なことをしない分むしろ結果が良くなるのではないか、と思うことがある。

曲がりなりにも、給料を頂いてプロとして運用している身でこうしたことを言うのはけしからん、と思われるかもしれない。ただ、確信を持って不要なことはしないという節度を持つことは、プロの重要な仕事だと思っている。

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再び、確信を持って何もしないという戦略(2)

話が逸れたが、政策アセットミックス策定において、サブプライムショック以後の相場下落時に発生した問題点は以下のようなものだ。

①資産のリターンは正規分布ではなく、もっと分布の裾野が長い(ファットテイル)。
②各資産間のリターンの相関は、相場下落時には高まる(相場下落時には分散効果が働きにくい)。

二つとも、サブプライム以後に初めて発生した現象ではなく、昔から言われていたことに再度注目が集まっただけという説もあるが、従来の政策アセットミックス策定時にはこの点が考慮されていなかったため、ダメージが大きかった。

そのため、こうした極端な相場下落時に年金資産をどう守るか、という方法論が議論されているのが現状のようだ。

①の解決策としては、べき分布などのファットテイルな分布を利用する、過去データを基準化せずに、ブートストラップ法でランダムに過去データを発生させて最適なポートフォリオを構築する等の方法がある模様。

ただ、前者は理論的にはきれいなのかも知れないが、分布の形状の特定が困難で、実務上の実効性が低いためやらない、という話を聞いたことがある。

後者は、検証に使用する過去データの取得期間によって結果が異なってしまうという問題は依然として残るものの、正規分布に基準化すると失われてしまう情報(ファットテイル、相場下落時の相関の上昇)を保存することができるので、従来の方法よりも下方リスク耐性のあるポート構築に向いているようだ。

②の解決策としては、①と重複するが、ブートストラップ法の利用で相場下落時の相関上昇をポート構築に折り込むことができる。また、正規分布を前提とした従来の手法を継続する場合でも、使用する相関係数を相場下落時の相関係数とすることで、分散が効かない時期に焦点を合わせた保守的なポート構築ができる。

とまあ、技術的な話をするときりがないのだが、結論を一言で言うと以下のようなものだ。

・下方リスク抑制を意識したポートフォリオ構築を実施すると、国内債券の組み入れ比率が上がる。
・こうしたポートフォリオ構築は、相場上昇局面では上手くアップサイドが取れない。
・そのため、通常、下方リスク抑制はアップサイドのポテンシャル追求とトレードオフの関係にある。

(続く)

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再び、確信を持って余計なことはしないという戦略(1)

サブプライムショック以降の相場下落を経験した今、株式のリターンは正規分布だという仮定は現実的だろうか、という問いを発すれば、殆ど全ての人は否、と答えるだろう。

だが、年金運用の政策アセットミックスを決定する際に、正規分布を前提とする方法の代替案はあるか?という問いに対しては、明確な答えを持つ人は殆どいないのではないか。

正規分布を前提とすることの問題点は分かるし、机上の試案として代替案を幾つか示すことも、この分野の専門知識がある人間になら、そう困難な作業ではないと思う。

ただ、「理論的な説明力」、「過去データを使用したバックテストの良好な結果」、「実務上の実行可能性」の全てをバランス良く兼ね備えた代替案を示すことは非常に難しいと思う。

年金運用のスキームを決める際には、投資としての経済合理性を持つ必要があるが、それと同時に(或いはそれ以上に)、ステークホルダーが納得する落とし所を模索する政治的な調整力が必要となってくる。

投資を適切に理解している人は一定数いるだろう。一方で、政治の上手い人間も一定数いる。ただ、投資が分かって政治力がある人材は、非常に稀有だと思う。

以下では政治の話は一旦横に置き、現状の政策アセットミックスの決定方法の現実的な代替案を考えてみる。

ちなみに、その昔「クオンツなんて要はチャートだろ?」と言われたことが妙に記憶に残っているが、この発言はある意味では正しく、ある意味では間違っていると思う。

全ての投資は、「過去の値動きからある特定のパターンを見出し、それが将来も継続することに賭ける行為」だと思う。そのパターンの再現性が高ければ高いほど、またそのパターンを知っている人間が少なければ少ないほど、投資手法としては筋が良い。

そういう意味では、「投資なんて要はチャートだろ?」が適切な表現だと思う。ファンダメンタルだろうがテクニカルだろうが、アクティブだろうがパッシブだろうが、定性だろうが定量だろうが関係ない。

運用は自然科学のように、過去に通用した法則が将来も(ほぼ)確実に通用する、という強い再現性を有する分野ではないので、「賭けを行わない」「リスクを取らない」という選択肢はありえない。

(続く)

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LDI

最近LDIの話を良く見聞きするような気がする。概念自体は昔から目にするので、特に新しい、という訳ではないと思う。ただし、日本では従来、年金負債の厳密な時価評価は求められてはいなかったが、今後は国際的な会計基準への収斂に伴い、負債の時価評価が求められる方向で制度変更がなされるようだ。

そもそもLDIとは何か、LDIが必要とされる背景、そしてLDIの普及によって発生するビジネスチャンスについて知っておくことは、この業界に身を置く者として必須だろう。まずは、LDIに関して簡単に整理してみる。

まともな結論が全く出ていない「インデックス運用のビジネスモデル」のエントリの続きはどうした、という突っ込みが入りそうだが、そこはそれ、気まぐれに描き散らすブログなのでご容赦下さい。そのうち書きます。

LDIとは、Liability-Driven Investmentの略。和訳だと負債対応投資、とか呼ぶらしい。年金運用の最終的な目的は、厳密にはベンチマークをアウトパフォームすることでも、長期でのリターンを最大化することでもなく、将来発生するであろう基金の年金給付の原資をきっちり確保することですよね、というコンセプトのもとに、年金負債と運用資産のマッチングを行う投資手法のこと。

資産と負債をマッチングする、という発想は従来からあって、債券中心の資産運用をして、資産側と負債側のデュレーションを一致させたり、負債のCFと同様のCFが発生するように保有債券の年限をコントロールする、という運用手法は従来からある。

では、LDIは何が新しいのかというと、昔からある発想が形を変えただけで何も新しくはない、という説もあるのだが、強いて言えば、デリバティブを使用したりして、従来よりも複雑でよりたくさん鞘を抜けるようにした・・・もとい、より高度な金融技術を用いて、柔軟かつ効率的な資産運用を実現している点に違いがある。

具体的には、

①金利スワップを利用して年金負債のCFをヘッジする。当然、スワップ利用には固定費がかかるが、商売上邪魔なのでこのコストについて触れるのは必要最小限にする。

②スワップで負債はヘッジされたので、これで将来の給付の備えは万全。そのため、残った資産は純粋にリターン追及用の資産という位置づけ。そのため、ベンチマーク連動などという退屈なことはせずに、ヘッジファンドでもコモデティでも排出権でもアイドルファンドでも、好きなものに投資して良い。

③デリバティブを利用しない従来の資産・負債のマッチングは、資産側の大半を長期債で固定してしまう必要があったが、金利スワップを利用した場合、ヘッジのために固定する資産は少額で済む(デリバティブなのでレバレッジが効く)。そのため、より多くの資産をリターン追及に回せる、という点が従来の手法と最も異なる点か。

確かLDIは2000年代前半に欧州で導入されはじめ、その後日本に概念だけは紹介されたものの、負債の時価評価が義務付けられて、年金基金の負債変動リスクがもろに本体企業の業績に影響を与える欧州と異なり、時価評価をしなくて良い日本では、欧州企業ほど導入のメリットがなかったため、導入が進まず現在に至る。

ただし、日本でも国際的な会計基準への収斂に伴い、年金負債の時価評価が求められる方向で制度変更が検討されており、昨今LDI導入の重要性が認識されつつある。そのため、運用会社はこぞってLDIの提案をしたり、そういう商品開発を急いでいる、というのが現状。

専門ではないので細部は違っているかも知れないが、大ざっぱな流れはこのようなものだと思う。

LDI使うと本当に年金負債をヘッジできるの? そんな都合のいい話ってあるの? とか、積立金が足りている基金は、現時点で負債をヘッジしてしまえば、その積立余剰を確定できてめでたしめでたしかも知れない。でも、2007年以降のマーケットクラッシュで運用資産が痛んで、積立不足に陥ってる基金の場合、今ヘッジしたら積立不足を固定することになっちゃうんじゃないの? という疑問は多々あるのだが、長くなるのでそれは次回以降のエントリで。

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ハゲタカ

映画・ドラマを見た。

「・・・アラン。TOBの準備だ。」

 

 

 

 

一度でいいから言ってみたい・・・。

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AIG社員の公開辞表

タイムリーなニュースを話題にするのは得意ではないのだが、最近報道されているAIG社員に対する懲罰的課税に関する話題を取り上げてみる。最近ニューヨークタイムズに、以下のようなAIG社員による公開辞表が掲載されたそうだ。

・原文
http://www.nytimes.com/2009/03/25/opinion/25desantis.html?_r=2&pagewanted=1&th&emc=th

・翻訳が掲載されているブログ
http://wallstny.exblog.jp/9923262/

詳細な内容については、リンクしているブログで詳しく紹介されているので、ここでは触れない。また、懲罰的課税の是非についても、識者が各所で議論していると思うので、素人が首を突っ込むのは止めておく。

この辞表が事実なのか否かについては、確認のしようがないが、これを見て再確認させられたのは、企業というのは、下手に責任感を出したり、誠実に仕事をしようという意識を持った人間が貧乏くじを引いてしまうという側面がある、ということだ。

そんなことは当たり前で、それがビジネスのルールであり、誠意だとか責任感だとかいう綺麗事は単に立ち回りの下手な人間の自己正当化のための言い訳だ、という説もある。実際に、色々なビジネスパーソンの発言を聞いていると、ことさらにそうした綺麗事系の概念を連呼して仕事に取り組む「姿勢」のあり方を強調するタイプは、実務能力が?だったり、人間性がややいびつだったりする傾向があるのは事実だ。そういうことは、職業倫理として心に秘めておくことは重要かも知れないが、口に出すと相当陳腐な精神論にしかならない。

身近な例で言っても、

・言われた仕事を馬鹿正直に受けて生真面目にこなすタイプは、便利屋として重宝はされるものの、本当に重要な仕事は意外と振られない。
・一方、使えない奴と言われない程度に雑務をこなしつつも、効用が低そうな仕事は要領良く断るタイプの方が概して仕事上のアウトプットの質は高いし、いざというとき周囲に頼りにされるのもこのタイプ。

という傾向は確実にある。

私自身、決して立ち回りが上手い方ではない。(自己評価としては「相当に下手」だが、周囲には結構立ち回りで得をしていると言われることがあるので、客観的にどうなのかは正直良く分らないが・・・)

そのため、できる限り要領良く立ち回ろうと意識した時期があった。ちなみに、アメリカあたりで40歳そこそこでスピード出世して大企業のCEOになるタイプの人材も、ほぼ例外なく要領の良いタイプだという話を聞いたことがある。

AIGの件でも、要領の良い人種はCDSで荒稼ぎした後さっさと会社を去って逃げ切っているのだろう。短期的に美味しい思いをするのは確実にこうした人種だ。ただ、本当に長期で顧客や周囲の人間と良好な関係を築いてビジネスで成功するためには、そうした小器用な立ち回りの上手さだけでは十分ではないのも事実だと思う。

このような不器用だが誠実な人間が貧乏くじを引いているのを見ると、どうしても自分はそうなるまい、と怖気づいてしまう。だた、貧乏くじを引いてでも維持しなければならない倫理や、通さなければならない筋があることを忘れてはいけない。そのことを再確認させられた記事だった。

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金融業界の流行り廃り

金融などという水ものの業界に身を置いていると、どうしても世の流行り廃りを気にしてしまう。

元来、流行り廃りには疎い方で、どちらかというと、流行っているものに飛びついたり、これから流行りそうなものを探す行為は浅はかで、周囲がどうであれ自分の価値観や興味の対象を愚直に深堀する方が粋だ・・・と考える傾向がある。

ただ、周期的に「これから流行る分野」にいち早く飛びついて、一山当てたい願望に囚われる時期が訪れる。大概、今の仕事がマンネリ気味な時や、友人・知人が転職して生き生きと働いているのを見た直後にそういった衝動に囚われる。

うろ覚えだが、自分が新卒で就職した前後では、コンサルブームは峠を過ぎていたように思うが、戦コン・投資銀行がステイタスの高い就職先ツートップだったと記憶している。現在はこういった市場環境なので、投資銀行は敬遠され(というかそもそも採用自体しないところも多いのではないか。)、戦コン、国内商社、国内金融機関あたりが人気が高いとのこと。

当時(2000年代前半)金融を志していた学生の間で人気だった分野は、M&A、証券化あたりだっただろうか。M&Aは目新しい金融技術で勝負、というよりは、リレーションシップビジネスの色彩が強いため、景気の波に左右されることはあるものの、今後もステイタスの高い職種であり続けるだろう。

証券化ビジネスも、当時の段階で既に、旨みのある大規模案件の証券化は一巡しており、今後は利益の出にくい小粒の案件中心になるだろう・・・というレポートを読んだ気がする。門外漢なので断定はできないが、現在では斬新なアイディアや最新の金融技術で勝負、というよりは、面倒な事務作業中心のコモデティと化している印象だ。

また、当時でも既にアメリカの住宅バブルは始まっていたため、金融専門の転職サイト等で、クレジット・デリバティブの経験者に対する需要が強い、という記載を見かけた記憶がある。2000年代前半にこの分野に飛び込んで、バブルが弾ける前にEXITしている人間は個人レベルで見れば結構いる筈だ。

当時、クレジット・デリバティブという名称を聞いた時の印象としては、

・デリバティブの取り扱う分野が、クレジットとか天候とか、段々パターンの定式化が困難な複雑系の分野になってきているな。

・デリバティブと相性がいいのは、債券等の人工的な色彩の強いプロダクトで、株式のような自然物に近い(要は複雑系な)プロダクトは相性が悪い。(株式のデリバティブはあまり流行っていないと誰かが言っていた。)

・だからクレデリはあまり面白い分野じゃないかな。

というものだった。この思考回路からしても、先見の明がないことは明らかなので、流行りを追わず、ちょっとニッチな専門分野を愚直に深堀する・・・という戦略を取ったのは正解だったのかも知れない。

ちなみに、既に昨年くらいから盛んにメディアでも報道されているが、次のバブル候補は「排出権取引」だそうだ。欧州では既に、排出権を取引するマーケットが形成され、排出権を原資産とするデリバティブも取引されているらしい。

ちなみに、国内の金融機関からも既に排出権先物価格に連動する投信が販売されているようだ。一瞬ネタで買ってみようかとも思ったが、どうせこの種の個人向けの新商品はやたらと手数料高いんだろう・・・と詳細を確認もせずに断念。

こういった行動パターンひとつ取ってみても、明らかに世の流行りに乗るのには向いていないんだろうな・・・ということを再認識。向かないことはしないに限る。

「向かないことはやらない。」「興味のないことはしない。」キャリア論や経営論の本で繰り返し連呼される原則だが、サラリーマンとして企業に所属していると、「人の嫌がることを率先してやれ。」「視野を広くして、バランスの取れた人材であれ。」という圧力を常に受けるので、この原則を貫くのは結構至難の業だ。

「人の嫌がること。」が「自分の向いていること。」だったりすると、結構組織人として大成しやすかったりするのだろうか・・・。

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