インデックス運用

インデックス運用のビジネスモデル(5)

顧客はインデックスファンドに何を求めるか?

年金基金と個人とでは当然運用の目的もスタンスも異なるので、要求する点も異なるだろう。また、同じ年金基金でも、運用する資金量や顧客属性(企業年金なのか公的年金なのか)によっても異なってくる。その多様性を脇に置いて、共通の傾向を見出そうとするのは悪しき一般化だという説もあるが、ここでは一旦見通しを良くするために、一般的な傾向について考えてみたいと思う。

まずは教科書的なおさらいから。

運用商品には、αを提供するものとβを提供するものの二種類がある。

αとは、ファンドのリターンとベンチマークリターンの差。運用者の腕によって獲得する超過リターンのこと。運用者の能力を評価する際には、インフォメーションレシオ(リスク調整後リターン。単位リスクあたりの超過リターンを示す)が高いこと、獲得するαが他の運用者のαと相関が低いことが評価のポイントとなる。他のαとの相関が低いと、分散効果が働きやすい、戦略の独自性が高いため陳腐化しにくい、というメリットがある。

βとは、株式市場や債券市場といった特定の資産クラス全体に幅広く分散投資した際に取るリスクのこと。マーケットリスク、システマティックリスクなどとも呼ばれる。βによるリターンを獲得するには、個別銘柄の選定はせずに機械的に分散投資すればよいので、アクティブ運用のような銘柄選択のスキルは不要。一方で、ベンチマークへの安定した連動性を確保するリスク管理のスキル、売買コスト等を最小化するコストマネジメントのスキルが求められる。

α型商品は、リターン重視の攻めの商品。β型商品は、リスク・コスト管理重視の守りの商品、という分類となる。尚、多分に主観も混じるのだが、インデックスマネージャーに「守りの仕事」という言葉を言うと、眉毛がぴくっと動くことがある。(心の声:俺達の仕事は守りじゃねえ。)

また、「これだけ面倒で複雑な事務を安定的にこなすには高いオペレーションのスキルが必要だから、誰にでもできるわけじゃないよね」という、発言者にとっては褒めているつもりの言葉に対しても、イラッとくるケースがある。(心の声:俺の仕事はオペレーションじゃねえ。)

同様に、バックオフィス経験のある人が、「いやあ、インデックス運用のセクションって、バックオフィスの雰囲気に近いんですね。実は私は以前バックで・・・」などと、親近感を出したつもりの発言をした場合、その人は暫くは暗い夜道は通らない方がいい。(心の声:俺はバックじゃなくてフロントだ!)

以前、近傍の職種の人から、「インデックスマネージャーはプライドが高い」と形容されたことがあるが、これは、建前としてはフロント職種なのだが、実態として仕事内容はミドルorバックに近い、という捻じれた環境下にあるため、仕事面での健全な誇りを維持するのが困難だ、という事情も大きいように思う。

最終的に人格まで捻じれるか否かは、もう皆いい大人なので自己責任だと思うので、情状酌量の余地があるとは思はないが、建前と実態が一致していた方が精神衛生上いいし、キャリア形成上も有益だろう。

個人のキャリア形成上は、明らかに建前(フロント職)よりも実態(ミドル/バック職)に合わせて専門知識とスキルを磨いた方が将来性がある。建前の部分は要は見せ方の問題なので、その辺はプレゼンの工夫で解決できるし、そもそも建前と実態が乖離した状態がそう長く続くとは思えない。この乖離は、早晩建前が実態に歩み寄る形で収束すると個人的には考えている。

そうなったときの市場価値を高めるために、個人的には今はミドル・バック系のスキルを伸ばすことに注力している。自分の競争相手が少なくなる、という意味では、もう少しこの「フロント職幻想」が継続してくれた方が良いが、周囲に同じ志を持つ同志がいた方が日々切磋琢磨できるという説もあるので、個人のキャリア形成としてはなかなか微妙なところだ、と感じている。

この捻じれ問題の根本は、インデックス運用特有の問題ではなく、「資産運用ビジネスで重要なのは運用力で、その運用力を発揮するフロント職が偉い」という雰囲気があり、暗黙のうちにフロント>ミドル・バックというヒエラルキーが成立しているという点にあると思う。(そういえば、こうした曖昧な「運用力」を売りにして商品を売る資産運用会社を宗教のビジネスモデルと同じだと某大家が言っていたっけ・・・。)

さて、話を戻すと、建前はさておき、インデックス運用は守りのビジネスだ。そしてコモデティとしての性質が強い。まずこの現実を受け入れないことには前に進めないように思う。逆に、中途半端なプライドを捨て、この現実を直視すれば、色々と工夫の余地のあるやりがいのあるビジネスだ、とも思う。

そうした観点で、顧客がインデックス運用に求めるものを列挙してみた。

①安い信託報酬
②安定的で高水準なレンディングフィー
③売買執行時のコスト抑制
④資産管理ツールとしての利便性の高さ
⑤安定してベンチマークに追従するリスク管理能力
⑥多様な商品の品揃え
⑦ファンド運営の透明性/再現性

詳細は次回以降。

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インデックス運用のビジネスモデル(4)

専門性の高い職種に共通する傾向だとは思うが、インデックス運用のファンドマネージャーなどというマニアックな仕事をしていると、自分達がアピールしたいことと顧客が求めることの間のギャップに直面する。

より厳密に言うと、FMは直接顧客に接する訳ではなく、間に営業が入るのが一般的だ。そのため、FMと営業の間にギャップがあり、更に営業と顧客の間にギャップがあり、二か所のギャップでそれぞれノイズが入ってしまい、全く顧客意向とは違う方向に走り出してしまう・・・といった悲劇(喜劇?)が比較的頻繁に発生する。

FMも自分達が毎日PCの前で大半の時間を過ごしており、社会的適応性が低いという自覚が(少しは)ある。また、インデックスファンドマネージャーという職種は、地味で細かい仕事を毎日黙々とこなすことに耐えられないと続かないので、基本的に真面目な人が多い(・・・と信じたい)。

そのため、営業の意向を組もうとして涙ぐましい努力をし、インデックス運用に興味がない営業が何となく言ったことを真に受けて頑張るものの、そこは掘っても水が出なかった、という事態も発生する。(その上、ピントがずれていると追い討ちをかけるように言われる)

また、こうした分業は、FMが「俺達はこんなに高度で精緻でエレガントな運用をしているのに、営業が無知だから顧客に届かない」などという責任転嫁の土壌にもなりやすい。

そんな事情で、社内では顧客動向に鈍いというレッテルを張られがちなインデックスマネージャーだが、やはり資産運用業はサービス業だ。顧客のニーズを把握しないとビジネスが成り立たない。それに、アクティブ運用の場合、「ベンチマークに勝て。以上。」という感じなので顧客ニーズの把握の部分ではさほど苦労しない(その代わり、ニーズの実現には苦労するが)一方、インデックス運用の場合は、信託報酬を安くしろという以外のニーズは顧客によってまちまちであり、その把握は非常に困難だ。

困難なことは付加価値が高い・・・という信念のもとに、次回以降では顧客がインデックス運用に何を求めるか?について考えてみたい。(世の中には難しいけど意味のないことも・・・いや、これ以上は止めておこう・・・。)

ちなみに、話は逸れるが、このブログを始めて半年ちょっとが経過するが、こんなマニアックで脈絡のない話ばかりにも関わらず、アクセスが徐々に増えている。(数はさほど多くはないが。)

見て頂いた方に、このブログのどんなところに興味を持たれたんでしょうか?と一度訊ねてみたい気がします。

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インデックス運用のビジネスモデル(3)

細かい話になるが、ベンチマーク通り運用というと機械的に売買をしているだけで誰でもできる、と思われがちではあるが、実際には以下のような(マニアックな)工夫の余地がある。

大前提として、どれもパフォーマンスで大きく差がつく類のものではないので、意味ないことすんなよと捉えるか、目に見えないところでこんなに細やかに運用してくれているなら安心だね、と捉えてくれるかは、顧客の価値観に大きく依存する部分だ。

①ベンチマークの大規模な変更時(通常四半期に1度)にはインデックスファンドのリバランスを見越して、先回りして鞘を抜こうとする投機的な投資家の売買で市場が歪むため、その歪みを回避するためにリバランス方法を工夫する。

②インデックスファンドの構築方法には、完全法/準完全法/最適化法/層化抽出法等の手法があり、取り扱う資産やファンドの規模に応じて適した手法が異なる。そのため、ファンドの性質に応じた構築手法選択の判断力を磨いたり、各手法のディテールに工夫を施したりする余地がある。こっちの方法よりそっちの方法でポート構築した方が推定TEは数bp低くなるから・・・などという涙ぐましい努力が日常的に行われる。

③日本の年金顧客は、諸外国に比して保有銘柄が破綻することにセンシティブだ。(他国の状況には詳しくないが、どうもそうらしい。)従って、ベンチマーク採用銘柄であっても、破綻する可能性の高い銘柄はポートフォリオから除外するという処理が必要となる。その際の除外銘柄の判断に一定のノウハウが必要。各社やり方は違うだろうが、概ね財務データ等を使用して定量的に信用リスクの高い銘柄をスクリーニングする、という方法を取っていると思う。

TOPIXのように銘柄数が多く、小型の危なっかしい銘柄の組み入れが多いベンチマークの場合は、このご時世だと各社100~200銘柄程度はポートから除外している模様。ちなみに、これだけの銘柄を除外すると、当然そのままではTEが上昇するため、除外銘柄と同業種の銘柄をその分オーバーウェイトするといったような、TE抑制のためのヘッジを実施するのが一般的。

面白いのは、この倒産懸念銘柄の除外は、「倒産懸念銘柄は今後パフォーマンスが低迷するだろうから、ポートフォリオから除外してファンドのパフォーマンスを向上させよう」という経済的な損得の観点で実施されているのではない、ということだ。ざっくり言うと、「受託者責任の観点から、倒産銘柄を保有することはけしからん」というのが主な理由らしい。そのため、多数の倒産懸念銘柄を除外し、その結果ファンドのパフォーマンスが向上しても褒められない。(場合によっては、ベンチマークに忠実にトラックしていないというネガティブな評価になる)

コンプライアンス上の理由・・・ということだろうか? そもそも受託者責任ってなんだよ、ファンドマネージャーの受託者責任ってファンドのパフォーマンスを向上させることじゃないのか、等の釈然としない部分は多々ありつつも、個人的には「年金運用のファンドマネージャーはサービス業。そのため、顧客の要望に忠実に応えるのが誠実な態度だ」と考えることにしている。

単に経済上の損得の話をすると、実は倒産懸念銘柄を除外することで、かえってパフォーマンスが悪化するという説もある。信用リスクが高く、株価が低迷している銘柄は反発時のリターンも大きい。そのため、上記のように100~200銘柄も除外していると、景気回復局面ではパフォーマンスはベンチマークに劣後してしまう。倒産懸念銘柄を除外するときは、TEをなるべく上げたくないので、事前に余裕を持って除外するということはせずに、本当に経営がやばくなるまでぎりぎりまで待って除外する。一方で、除外銘柄を再度組み入れる際には、組み入れを再開した銘柄がその後倒産すると目も当てられないので、倒産懸念が十分払拭されるまで待ってから行う。結果、安く売って高く買う、という経済効果としては最悪な投資行動を取ってしまう可能性がある。

インデックス運用というのは、中途半端に個別銘柄の判断を行うよりも、機械的に市場ポートフォリオを保有した方が長期でのリターンは良い、という哲学の運用なので、あるべき論を言うと、上記の倒産懸念銘柄の除外は理にかなっていない。

一方で、インデックス運用だからってベンチマーク通り機械的に運用していい筈がない。そのため、常時保有銘柄をモニタリングして、保有する価値のない銘柄は除外するのがプロの仕事だ、という意見もそれはそれで正しいものだと思う。

どちらが考え方として正しいかはもはや価値観の問題なので、明確に○×がつく類の話ではないのだとは思う。インデックス運用は数字で明確な差がつかないという特性上、このように「結局最後は価値観の問題だよね」となってしまうケースが非常に多い。そして当然、その価値観は顧客によって異なるため、我々は、この方法だとあっちの顧客の意向には沿うけど、こっちの顧客の意向には反するから・・・などと右往左往することになる。

会社として明確にポリシーを打ち出した上で、うちのポリシーにご賛同頂けないお客様はどうぞ他社へ、というスタンスを取れれば楽なのだろうが、それが出来るのはブランドが確立された本当に少数の老舗運用会社だけだろう。(日本の運用会社では無理だと思う・・・。)

ただ、どの顧客にもいい顔をしようとして、複数の価値観の折衷案のような対応をすると、えてして中途半端な対応となり結局どの顧客のニーズも満たせない、という最悪の結果になる可能性もある。

人間、万人に好かれるのは不可能なので、せめて自分と価値観の合う相手に尽くそう・・・という覚悟が必要なのは、インデックス運用だけに限った話ではないと思うが・・・。

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インデックス運用のビジネスモデル(2)

前回の続き。
完全にチラシの裏状態なので、未整理なのはご容赦下さい・・・。

・プロダクト提供型
個性的な運用哲学を前面に押し出してブランド価値を高め、特定のプロダクトの品質で勝負するビジネスモデル。株式のボトムアップリサーチをベースにした定性アクティブ運用ならフィデリティ、インデックス運用ならバンガードやBGIあたりの外資系が該当するだろうか。

実際の運用の巧拙はさておき、これらの運用会社はとにかくブランドイメージの確立の仕方が上手い印象。尖った運用哲学を打ち出して、それに沿って組織体制・商品のラインナップを決定しており、例え世の中でブームになっている商品でも、自社の哲学と整合的ではないものについては、ブランドイメージを損なうと判断して手は出さない。他社に乗り遅れまいとして、流行りものに一斉に飛びつくイメージのある日本の運用会社と比較すると、数段マネジメントが洗練されていると思う。

ただ、洗練されているのはあくまでも「マネジメント」であって、実際の運用のクオリティが高いかと言うと、そうでもないようにも思う。ことインデックス運用について言えば、国内大手と外資系を比較すると、外資系の方が割り切ってざっくりとやっており、国内大手の方がきめ細かく運用をしているように思える。

インデックス運用の場合、正直なところ、少々きめ細かくやったところで数字(TEやトレーディングコスト等)が目に見えて変わるわけではない。であれば、数字に表れない無駄な努力はせずに、その分業務を効率化して管理コストを低減し、それを信託報酬を下げるという形で顧客に還元した方が、顧客利益になるという考え方は正論だ。

ただ一方で、品質向上と称して、ポートフォリオ構築にクオンツっぽい手法を導入したり、トレーディング手法にやたらと凝ってみたり、権利関連の判断(保有銘柄にTOBがかかったときどうするかとか、公募増資を実施した時にどう対応するかとか・・・)を詳細に実施したりすることは、良く言えば「丁寧」「きめ細かい」対応で、経済上の損得勘定だけに左右されるのではなく、顧客の財産を細部まで責任を持って管理する倫理感の高い行動と言うこともできる。こうした点が、運用に対する意識の高い顧客に定性的に評価されるというケースもある。

そもそも、インデックス運用自体が、地道にコスト抑制に努めていれば、短期間では明確な差がつかなくても、長期でみればその累積で顧客の資産価値は大きく変わってきますよね、というスタンスの運用手法なので、短期的に数字に現れなくても愚直に上記品質向上を実施する、というスタンスは運用哲学と整合的だという説もある。

聞きかじった話だが、実際に某外資系が、インデックスファンドの保有銘柄のコーポレートアクションで割り当てられる権利証券を適当に処理していたことが当局の検査で指摘され、その管理体制の杜撰さで×がついて大口顧客が一斉に解約した、という事象も過去あったらしい。

外株のインデックス運用では、ライツ割り当てやら、スピンオフで非上場銘柄が割り当てられたりと、処分に困る微妙な証券を勝手に割り当てられるケースが多い。その一件一件を精査して、処分方法を検討することは結構な手間暇がかかるものの、これらの資産価値は微々たるものが大半で、はっきりいって適当に処理してもパフォーマンス上の影響は殆どない。(当然、ものによりますが・・・。)

だったら、面倒だし事務コストがかかるから全部一律失効させちまえ・・・と、この会社は判断したと推測される。こうした「経済合理的」な判断が、ビジネス上は不適切な判断となるケースもあるのが難しいところだ。

ビジネスライクに割り切りすぎても誠実さに欠けるという印象を持たれるし、職人嗜好で細部のディテールに拘り過ぎて全体像を見失うと、趣味的過ぎると評価を落とす。要は木も森もバランス良く見て下さいね・・・というありがちな一般論に落ち着くわけだ。ただ、インデックス運用者の場合、そのバランスを取るのが他職種より難しい気がする。アクティブ運用などの他のフロント職種から見ると、組織戦をする必要があるのでビジネス寄りのスキルが必要。一方で、企画セクション等の管理系職種と比べると、現場で手を動かす仕事なので職人気質が必要と、自分の軸を非常に定めにくい。

これは、インデックス運用という職種の歴史が浅く、役割期待/キャリアパスが明確に定まっていないという事情による部分も大きいとは思う。浅く広くの便利屋で終わるのか、特定分野の専門性を有しつつも、守備範囲も広くビジネスの全体感を掴めるディープジェネラリストになれるのか、個人的には今その分岐点に自分がいる・・・ような気がしている・・・。

さて。
何の話をしているのか分からなくなってきたが(笑)、プロダクト提供型で成功できる企業というのは、特色のある運用哲学を持ち、グローバルで十分な実績のある外資系と、大手運用会社でキャリアを積んだプロが立ちあげた小規模なブティックかのいずれかになるのだろう。(普通の結論過ぎる・・・。)

ただ、資産運用業はやはり装置産業で規模がものを言う業界なので、後者はなかなか厳しい。ヘッジファンド等で真に尖った運用をするには、資産運用会社というよりは、投資銀行等でキャリアを積む必要があるだろうし・・・。運用会社出身者が独立するとなると、大概インフラも資産規模も必要ないファンドオブファンドの形態で、有名どころのファンドを集めてパッケージにして売って鞘を抜く、という紋切り型のパターンに陥りがちだが、正直このパターンが上手くいくとはあまり思えない。

やはり、ファンドマネージャーとして生きる場合、インフラのしっかりした大手運用会社で、会社のリソースを有効活用して自身の職人芸を極めるのが幸せなのだろうか・・・。

ついに若手とは呼ばれなくなってしまった年齢のせいなのか、最近何を考えていても自身の今後のキャリアパスに引き付けて考えてしまう。私自身、モラトリアムな傾向がある感は否めないが、その他の要因としては、インデックスファンドマネージャーのキャリアパスが確立されていない(少なくとも日本では)という事情も大きいのでは、と思う。インデックス専門のファンドマネージャーを置くようになってから、日本ではせいぜい10年程度。長いような短いような・・・。

コモデティと化した既存のインデックスファンドの管理の技術だけを磨いても、この先立ち行かなくなるという危機感がある。インデックス運用で培った知識/技術を活かせる近傍領域にシフトするのが合理的な気もする。とは言いつつも、あまり華はないかも知れないが、「シンプル透明性の高い商品を低コストで提供」「確信を持って余計なことをしないことが顧客利益につながる」というインデックス運用の思想は好きだし、愛着もある。

俺が第一人者になってこの分野の地位を引き上げてやると言えるまで、コミットできれば良いのかもしれないが、残念ながら、今は未だその覚悟はない。

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インデックス運用のビジネスモデル

ニュース等でアウトソーシング関連の記事を見るたびに、アウトソーシング対象となる業務とインデックス運用業務の共通点の多さに複雑な思いを抱く。

日本の大手運用会社の場合、自社のインデックスファンドを顧客に勧めるより、インデックス専業の運用会社のプロダクトや、資産規模の大きなETFを勧めた方がコスト面でも品質面でも、顧客の利益に沿っているようにも見える。また、運用会社としても、フィーは薄いけど手間はかかるコストセンターのインデックス運用部門をアウトソースして、収益性の高いプロダクトに注力できる。

証券関連のバックオフィス業務が、各信託銀行から切り離されて、資産管理銀行3社に集約されたように、インデックス運用業務も少数の専業の会社に集約する方が合理的・・・と常々思っているのだが、現実はなかなかそう理屈通りにはなりそうにない。経験年数が浅いうちは、非合理的だ、としか思えなかったが、多少の経験を重ねると、そう上手くいかない大人の事情があることが少しずつ見え始めてきた。

今回のエントリーから暫くは、今後の自身のインデックスファンドマネージャーとしての方向性の模索のためにも(大袈裟だが・・・)、インデックス運用のビジネスモデルについて考えてみようと思う。

まずは、運用会社のビジネスモデルの概観から。

運用会社のビジネスモデルは、ざっくり言うと、ソリューション提供型/プロダクト提供型の2種類に大別できると思う。
(私が携わっているのは、主に機関投資家向けの資産運用ビジネスなので、以下は全てその視点で記載している。リテール向けの投信ビジネスだとまた違った風景が見えるのかも知れない。)

・ソリューション提供型
専門の営業部隊による顧客への資産運用戦略の提案し、その戦略実現のために、各種プロダクトを組み合わせて提供、というビジネスモデル。戦略提案自体ではアドバイザリーフィーは取らず、最終的にプロダクトの信託報酬で収益を上げる。そのため、プロダクトを売ることを目的として戦略提案を行うため、顧客本位ではなく収益率の高いプロダクトを推奨しがち、といったデメリットがある。

反面、戦略提案からプロダクト提供まで一貫して担うため、専業コンサルのような絵にかいた餅的な提案に終わらない、といったメリットも存在。自社で多様な商品を用意しているが、海外ものやオルタナ系商品はアウトソースする。その際にはちゃっかり仲介手数料を中抜きする。

このあたりの事情は、総合系コンサルの戦略部隊が、システムを売った方が儲かるので、真に戦略的な視点からではなく、システム導入につながるようバイアスがかかった提案をしがち、という構造と同一だと思う。どこの業界でも見られる割とありがちな話ではある。

日本の大手運用会社は総花的な傾向があるので、基本的にこのタイプだと思う。会社毎に、アナリストの定性判断に基づいたアクティブ運用が得意とか、クオンツ分析の部隊が充実していて、クオンツアクティブやインデックス運用に強い、等の微妙な色はあるものの、外資系ブティックのような強烈な個性はないと思う。

外資系の場合、本国では総合的にビジネスを展開しているものの、日本のマーケットに食い込む場合は得意分野を前面に押し出して営業を展開する、という傾向があるので、一概に日本の運用会社は個性がない、と決めつけるのはフェアではない気はするが・・・。

プロダクト提供型については、長くなるので次回のエントリーで記載。・・・ソリューション提供型/プロダクト提供型の対比をしようと思ったが、内容は結局、国内大手/外資系の比較になってしまう予感が・・・。

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小型・バリュー・逆張り

第三世代インデックスのエントリーで取り上げた「ファンダメンタルインデックス」と「最小分散ポートフォリオ」だが、この二つはポート構築の哲学は「リスク最小化」と「企業価値重視」と全く異なっているものの、最終的に構築されるポートフォリオには一つの共通点がある。これは個人的には非常に興味深いと思う。

その共通点とは、時価総額加重型のインデックスよりも、「小型・バリュー・逆張り」にティルトしている、という点だ。

こうした特性を持つ銘柄群で構築されたポートのリスク・リターン効率が良い理論的な根拠として、行動ファイナンスの見地から以下のような説明がなされているのを見つけた。ファンダメンタルインデックスと最小分散ポートフォリオが共通の特性を有することの一つの説明になると思う。詳細はリンクを参照。

①若い企業、利益が上がっていない企業、極端なグロース企業
⇒投資家はこれらの企業に対してばらつきの多い評価をするため、裁定が働かない。結果、高ボラティリティ、市場時価がファンダメンタル価値から乖離、という現象が生じる。

②過去の業績に関する長い履歴と有形資産を持ち、安定配当の企業
⇒評価の主観性の程度が低く、投機性向の変動の影響を受けにくい。結果裁定が働き、市場時価とファンダメンタル価値が乖離せず、低ボラティリティとなる。

■引用)行動経済学会 研究報告予稿 最小分散ポートフォリオのリスクとリターン
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/abef/event/20081221/yokou_hpup/no5.ishibe_revised.yokou081121.pdf

尚、やや主観が入るが、典型的な定性アクティブのファンドは、グロースよりのものが多いように思う。(バリューファンドと銘打っていても、組み入れ銘柄を見ると、これってグロース銘柄じゃ・・・と思う銘柄が多数見受けられるケースも多い。)

これはグロース系の銘柄の方が市場参加者の注目度も高いため、リサーチが手に入りやすい、という理由もあると思うが、加えて以下のような理由もあるのではないかと推測する。

・年金運用や投信では長期投資と銘打ってはいるものの、実際は短期でのパフォーマンスで評価されがち。そのため、ボラの高い上記①の銘柄群の方が、比較的短期間でリターンを実現できる(ように少なくともアクティブFMには見える)。

・投資家の予想にばらつきがあり、裁定が働いていない①の銘柄群の方が、自分の相場観・リサーチで付加価値をつけやすい(基本、アクティブFMは自分は大多数の投資家よりも優れていると考えている)。②の銘柄群はリターン実現まで時間がかかるし、特に自分独自の判断を必要とされる訳ではないので、退屈。

やや悪意を持って解釈すると(笑)、①の銘柄は自信過剰の有象無象の投資家達が群がっていじりまくっているのでリスク・リターンの効率が悪いので、長期投資の対象としては②の銘柄群の方が優れている、となる。そういえば、バフェットなどの世のバリュー投資の大家が好む銘柄も②のカテゴリーに属している。

そう考えると、時価総額加重型インデックス vs 第三世代インデックスという対立の構図は、グロース vs バリューという古典的な対立の構図の形を変えたものに過ぎないのかも知れない。

バリューの方が安定的にリターンを積み上げられるが、一発当たった時のリターンはグロースの方が大きいので夢がある・・・。どちらがいいのかという議論は神学論争になるので止めておこう。

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第三世代インデックス

インデックス運用は、幅広い銘柄に分散投資して、特定の市場全体のリターンを教授する投資手法なので、都度、個別銘柄単位での投資判断は実施しない、というのが建前だ。投資判断は、都度実施するのではなく、インデックス運用開始時のベンチマーク選択時にまとめて判断を実施し、その後は当初の判断を信じて、粛々と運用コストの抑制に努める、というのが正確だろうか。

ベンチマークの選択は戦略的には非常に重要な投資判断であり、本格的に実施しようとすると非常に奥の深い、やりがいのある仕事だと個人的には思う。ただし、以下のような理由で、いちファンドマネージャーにとっては魅力的な仕事とは言い難いかも知れない。

・ベンチマーク選択は顧客の判断で実施するものであり、ファンドマネージャーに裁量はない。(複数のベンチマークの特性を分析して、顧客に提案することはある。所謂、ベンチマークコンサルティングというものだ。)
・ベンチマーク選択の巧拙の判断は長い時間を経ないと分からない。また、個別銘柄の選定のように、他者の知らない情報を知っていることを付加価値の源泉とすることもできない。そのため、どうしても過去のデータを机上でいじって数字を作り、最終的には「哲学」やら「相場観」といった抽象的なものを拠り所として判断を下さざるを得ない。要は、明確な答えのない分野である。そのため、顧客の資産全体への寄与は大きいものの、運用会社が付加価値をつけることが難しい。(この辺の事情は、アセットアロケーションに通じるものがあると思う。)

大半のインデックス運用は、個別銘柄の時価総額に応じて組み入れウェイトを決定する「時価総額加重型」だが、その他にも、「ファンダメンタルインデックス」、「最小分散ポートフォリオ」等のウェイト決定の哲学が異なるインデックス運用も存在する。

検索すれば詳しい解説は見つかると思うので詳細な解説はしないが、これらのインデックス運用の哲学は以下のようなものだ。

・ファンダメンタルインデックス:
個別銘柄のウェイトは、売上・利益・キャッシュフローといったファンダメンタルな指標によって決定する。時価総額加重のインデックスの場合、市場で割高に評価されている銘柄を多く組み入れ、割安に評価されている銘柄を少なく組み入れてしまうという問題が発生する。そのため、ファンダメンタルな企業価値でウェイトを決定することにより、バリュー投資のような効果が発生し、時価総額加重型のインデックスよりも長期的なリターンが大きくなる。

・最小分散ポートフォリオ:
時価総額加重型インデックスの場合、リスク・リターンが最適化されていない(CAPMで言うところの効率的フロンティアの内側に存在している)。そのため、ヒストリカルなデータからリスクを算出し、全体のリスクを最小化するようにポートフォリオを構築すれば、リスク・リターンの効率が向上するという考え方。アメリカ市場での長期のデータを使用した実証研究では、時価総額加重型よりもリスクは低く、リターンは高いという結果が出ているとのこと。

実証研究で時価総額加重型よりも運用効率が高いことが示されているのであれば、上記哲学のインデックス運用に切り替えればいいじゃん、というのが素朴な感想ではあるが、上記手法(第三世代インデックスと呼ばれているとかいないとか・・・)には、実務に適用する上では以下のような問題点が存在する。

・売買回転率が高い。一言で言ってしまうと、ウェイト計算で複雑なことをしているので、頻繁にポートフォリオを調整する必要があるので、売買量が上昇する。日本市場での実証研究では、ファンダメンタルインデックスの場合、ITバブルの頃のように企業の業績変動が激しい時期には、インデックスの片道の年間売買回転率は50%を超えることもあるという。これは、1年間でインデックス全体の時価総額と同額の売買が発生するということだ。売買コストの見積もりは難しいが、例えば証券会社への手数料が10bp、執行時のマーケットインパクトコストを40bpと見積もると、年間でファンドのパフォーマンスが50bpも押し下げられることになる。机上でのシミュレーションでは時価総額加重型よりもパフォーマンスが良いと思っていたら、いざ実際に運用すると売買コスト考慮後ではパフォーマンスは負けてしまいました・・・という事態は十分に想定される。

他にも、マニアックなベンチマークを採用すると他社と横比較しにくい、ベンチマークのメンテナンスにノウハウが必要でコストがかかる(でもインデックス運用なのでフィーはそんなに貰えない)、といったデメリットもある。

上記のような癖の強いインデックス運用は、メリット/デメリットがはっきりしており、ビジネスラインには乗りにくい。ただ、こうした個性的なコンセプトを前面に押し出したインデックス運用が増えることは、ファンドマネージャーとしてはノウハウの蓄積に繋がるし、顧客にとっても商品の選択肢の幅が広がることになるため、望ましい傾向だと考えている。

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株価指数とベンチマーク

こうした経済状況だと、当然のことながら倒産する会社が増える。株式のインデックスファンドは最適化法で極端にユニバースを絞り込んでいない限りは、通常千数百もの銘柄を保有しているので、当然、その中から一社や二社倒産銘柄が発生するのは当然だ。

特に、国内株でTOPIXをベンチマークとしている場合、東証一部全銘柄が組み入れ対象となっているため、2009年3月末時点で組み入れ銘柄数は1710銘柄と他の株式ベンチマークと比較して明らかに多い。

インデックスファンドのベンチマークとして開発された、国内株のラッセル野村プライムだと銘柄数が増加しないよう指数構築ルールが定められているので、ほぼ1000銘柄前後で安定しているし、外国株のMSCI_KOKUSAIの場合でも、3月末時点で大体1300銘柄強といったところだ。

これは、もともとTOPIXは「ベンチマーク」として開発されたものではなく、「株価指数」として開発されたものをインデックスファンドのベンチマークとして事後的に使用するようになったため、適切な銘柄除外のルールが整備されていない、という理由による。

「株価指数」と「ベンチマーク」の違いとは何か、ざっと整理すると以下のようになる。

■株価指数:
ある特定の国や業種の株式全体の動向を表現するための指標。あるカテゴリーの動向を適切に反映する必要があるため、「市場代表性」を重視する。つまり、できる限り網羅的に銘柄を組み入れ、コーポレートアクションに伴う流通株数の変化は、極力リアルタイムで指数に反映する必要がある。

■ベンチマーク:
インデックスファンドがトラックする対象となるため、「市場代表性」と「再現性」をバランス良く兼ね備えている必要がある。この二つの概念はトレードオフの関係にある。銘柄数を増やした方が市場代表性は向上するが、ファンドの管理コストが上がり、再現性は低下する。また、ベンチマークの変更を頻繁に実施すると、市場代表性は向上するが、ファンドの売買回転率が増加し、売買コストがパフォーマンスを圧迫することになる。

指数ビジネスは最大手がシェアを独占する類のビジネスだが、最もメジャーな指数が必ずしも品質が高いわけではない点が面白いところだ。例えば国内株の場合、TOPIXよりも後発のラッセル野村プライムなどの方が、ベンチマークとしては明らかに練れている。

更に、ベンチマークについて考える際には、上記の対立の他に、構築方式が「ルール方式」か「コミッティ方式」かという対立がある。違いは以下の通り。この二つも、基本的に対立概念だ。

■ルール方式:
事前に指数構築方法のかなり細かい部分まで定量的にルール化して、実運営では予め定められたルールに則ってデジタルにリバランスを行う。「透明性」「一貫性」に秀でる反面、個別に事態に対処するわけではないので、「柔軟性」に難がある。また、透明性が高いことの裏返しとして、指数のリバランス内容が事前に推測可能なので、投機筋に先回りされてリバランス時のアノマリーが発生しやすい。

■コミッティ方式:
ルールは、指数構築の原理原則を定めるにとどめ、細かなプロセスまではルール化しない。リバランス内容は、経験豊富な有識者が都度、原理原則に則って決定する。密室での決定となるため、透明性に難があり、またコミッティのメンバーの入れ替えによりポリシーがぶれるリスクがあるので、一貫性にも問題を孕む。しかし、個別のコーポレートアクションに柔軟に対処できる、投機筋のターゲットになりにくい、というメリットがある。

国内株の場合、ラッセル野村は前者、S&PJapan500は後者、TOPIXは両社の中間、というイメージだ。

このように、銘柄数が多いということはメリット・デメリットがあり、必ずしも悪いわけではないのだが、こうした倒産銘柄が多い現状だと、デメリットが際立ってしまう。日本特有の現象だという話を聞いたことがあるが、日本の年金顧客は、保有銘柄が倒産することを非常に嫌がる傾向がある。

私はキャリアが浅い頃は、

・倒産懸念がある銘柄は、潰れたら価値は0だが、もし業績が持ち直した場合は通常の銘柄よりも良いリターンとなる。そのため、倒産懸念銘柄をポートから排除することは、倒産リスクを排除できるものの、復活時のリターンを享受することを放棄することに繋がる。そのため、倒産銘柄を保有していたか否かという点にこだわるよりも、ファンドトータルでのリターンを最大化することに注力する方が経済合理的だ。

・・・などと考えて、倒産銘柄保有をやたらと気にするシニア連中を冷やかな目で見ていたのだが、そう単純な話でもないようなのだ。

長くなるので、倒産銘柄については別途書くことにする。

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ジャッジメンタル運用とプロセス運用(2)

プロセス運用とジャッジメンタル運用のどちらが運用手法として優れているか、という話の前に、一旦プロセス運用に適した人材について考えてみる。

ぱっと見の印象では、クオンツアナリストの経験がある人材が新和性が高そうだが 実際には両者の価値観は相当に異なる、という印象だ。

クオンツは、当たり前のことを理屈をこねてアカデミックな研究で箔を付けて、やたらと複雑なロジックを組んで有り難みを出すということが、ビジネス上ある程度求められる。そうした環境下でキャリアを形成すると、個人の価値観もそういう方向にバイアスがかかる。

一方、プロセス運用は目的に最短距離で到達するシンプルな仕組みを設計する必要がある。価値観的には、両者は水と油だと思う。

職種柄クオンツと一緒に仕事をすることは多いが、こいつら当たり前のことを何でこんなに大袈裟且つ回りくどく言うんだろうという感想を抱いてしまうことが多い。多分、クオンツ側から我々を見ると、,割り切りが早すぎる、新しい運用手法の採用に消極的、新たなアイディアは一見無駄に見える「遊び」の部分から生まれるというのに、こいつら遊び心が無さすぎる、という感想を持っていると思う。

プロセス運用に必要な資質を箇条書きにしてみると、

・物事を整理分類し エレガントな仕組みを設計するのが好き。
・シンプルなものは美しいという明確な信念を持つ。
・運用にそれなりに興味がある。それなり、というのが重要。興味がありすぎるとアクティブをやりたがるので、興味の度合としては、仕組みの設計>運用、という関係が望ましい。

一般的なイメージ通り、やはり必要となる資質はIT関連職のそれと近い。そのため、金融系SE/ITコンサルあたりから転身した人材が適任なのでは、という気がする。

一言でいうと、ジャッジメンタル運用は、「走りながら考える」、プロセス運用は「事前に全て計画してから走り出す」という違いがある。

運用に限らず、走りながら考えるのは上級者向きであり そのスタイルに相応しい人材は稀だ。また、その人材を外部から見極めるのは非常に困難であり、仮に見極めることができても、継続性があるかはどうかは別問題。そして優秀な人材には運用の依頼が集中するので、全ての条件をクリアするマネージャーがいたとしても、そのマネージャーが資金を引き受けてくれる可能性は低い。

こうした点を考慮すると、一般的な年金基金や個人がこの条件をクリアできるとは思わない。だから、退屈だが大きな外れがなく(大当たりもないが) コスト競争力という明確な強みを持つプロセス運用のほうが長期の資産運用の器として相応しいのではないか。そして、愚直にそうしたプロダクトを提供することがビジネスとして誠実な立場なのではないか。

これが、現時点の結論だ。

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ジャッジメンタル運用とプロセス運用

定性判断/定量判断、アクティブ運用/パッシブ運用、ジャッジメンタル運用/プロセス運用・・・と、運用手法を対比させる用語はいくつもある。定性・アクティブ・ジャッジメンタルと、定量・パッシブ・プロセスはそれぞれ何となく同じカテゴリーに属する感じがするが、それぞれ微妙にニュアンスが異なる。

私の場合、後者のカテゴリーに属する運用を担当しているが、あなたの専門とする運用手法は何ですか?と問われた場合、結構答えるのが難しい。主に担当するファンドはパッシブ(インデックス)ファンドだが、アクティブ運用のプロダクトを持ってみたいという願望もそれなりにあるし、現状でもエンハンストインデックス運用やクオンツアクティブ運用にも多少はタッチしているので、完全にパッシブ専任、という訳ではない。

また、パッシブ運用というと、定量(クオンツ)判断中心なイメージがあるが、実はかなり定性的な判断も行う。そのため、定性/定量のバランスが取れた判断能力が要求されるので、定量判断による運用を担当しています・・・というのも実態にそぐわない。

個人の趣向と実際の仕事内容を総合すると、「私の専門はプロセス運用です。」という回答が最もしっくり来る気がする。では、プロセス運用とは具体的にはどのような運用スタイルなのか。BGIあたりのHPを見ればその単語を目にすることが出来るが、一般的にはあまり馴染みのない用語だと思う。システム運用、と言った方が一般的かも知れない。

まず、プロセス運用とジャッジメンタル運用を簡単に定義してみる。

■ジャッジメンタル運用:
ファンドマネージャーが、都度投資判断を実施する運用。判断を下す際の根本的な運用哲学(戦略)は一貫していなければならないが、個別の投資判断(戦術)はその時々のマーケット環境を考慮し決定する。人間が最新の情報を用いてリアルタイムで判断するため、機動性・柔軟性の高い運用が可能な反面、運用プロセスが不明瞭、FM個人の判断に依存するため判断にバイアスがかかりやすい、といった欠点がある。

■プロセス運用:
運用を開始する際に、運用哲学のみならず、個別の投資判断のプロセスまで明確に定義し、実際の運用は予め定められたプロセスに従ってシステマティックに実施する。運用プロセスの透明性が高く、一貫性の高い運用が可能な反面、過去通用したパターンが将来も通用するという前提を置いた運用手法なので、環境変化に弱い(機動性に欠ける)、運用手法が硬直的になりがち、といった欠点がある。

教科書的な定義はこのような感じだろうか。あと、ビジネス上は、プロセス運用は一旦システムを組んでしまえば、大規模なアナリスト部隊を抱えたりする必要もないので低コストで済む、という点も重要だ。

前者に強い運用会社はフィデリティやキャピタル、後者はBGIやステートストリートあたりだろうか。日系の運用会社は総合力重視(総花的?)なので、外資系ほど強烈なブランドイメージはないが、例えば信託銀行であれば三井アセットが後者に強い、とか微妙な強み・弱みが存在する。

で、まどろっこしい前振りはいいから結局どっちがいいんだよ、という突っ込みが入りそうだが、世の常として、どちらか一方が絶対的に優れている、ということはなく、前提条件次第で有利な条件は異なってくる。

一言で言うと、ファンドマネージャーのスキルが十分に高くて、且つ運用上の制約が少なく十分な裁量が与えられている場合はジャッジメンタル有利、そうでない場合はプロセスの方が良い、ということになる。

こう言ってしまうと非常に身も蓋もないのだが、詳細は次回。

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インデックス運用というゲームのルール

インデックス運用の評価はトラッキングエラーだけモニタリングしていれば良いので簡単だ、という意見はインデックス運用が普及してきた現在でも定期的に耳にする。

ただ、まともに評価を実施しようとすると、むしろアクティブファンドよりも評価が難しいのではないかと思う。その難しさは、ゲームのルールが明確でない=何をしたら勝ちなのか(評価されるのか)という基準が曖昧だ、ということに起因すると思う。

アクティブファンドとインデックスファンドの目的を一言で言うと、

・アクティブファンドは、リスク/リターンを最大化することが目的。
・インデックスファンドは、リスクとコストをバランスさせて、トータルで顧客の効用を最大化させることが目的。

となる。前者は比較的分かりやすく、

・ファンドのアクティブリターン÷ファンドのTEが高ければ高いほどいい。

と整理できる。(話が複雑になるので、信託報酬はとりあえず無視)

一方でインデックスファンドの場合、

・ファンドのTE+λ×ファンドのコストが低ければ低いほどいい。

となるが、TEとコストという次元の異なるものを比較しているため、投資家によってコストの掛目であるλの大きさは当然異なる。リスクには比較的寛容だが、コストに対しては厳格な投資家の場合、λは大きくなるし、逆にリスク回避的な投資家の場合はλは小さくなる。

ベンチマークに忠実にトラックしていれば顧客評価は高いんだよね・・・と思って、ベンチマークに連動するために、ベンチマーク構成の変更に合わせて頻繁に売買していれば当然売買によって発生するコスト(証券会社への手数料、カストディアンに支払う事務管理手数料、トレーディングによって発生するマーケットインパクトコストなど)は増加する。

事後的にファンドのパフォーマンスを見ると、ベンチマークのパフォーマンスにコスト分だけ下ぶれて忠実にトラックすることになる。もし、顧客がTEよりもコスト重視の顧客だった場合、顧客のニーズとは全く異なった方向に努力していることになり、運用者も顧客も両方不幸だ。

このように、インデックスファンドはλの設定次第で採用すべき運用手法がかなり異なってくるため、顧客ニーズの把握が実は運用の肝であるという側面がある。複数の顧客の資金を合同で運用する投信や年金の合同口等では、不特定多数の顧客の最大公約数を読む必要があるし、大口顧客の資金を単独口座で運用する場合は、その顧客の懐に深く入ってニーズをオンデマンドで把握する必要がある。前者はマーケティングの領域で、後者はコンサルティングの領域なので、求められる資質も異なってくる点も悩ましいところだと思う。

また顧客も、必ずしも自分たちの効用を自信を持って定義できている訳ではないため(そんな細かいことを気にしても・・・くらいの感覚が標準なのではないか)、評価の基準はどうしても直感的に分かりやすい信託報酬や、運用コンサルの定性評価が中心となる。そのため、ファンドマネージャーも無意識のうちに、顧客の評価≒運用コンサルの評価と近似して、運用コンサルの評価基準に合致した運用をするという捻じれた状態が発生する。

そして、運用コンサルに対して、「あいつら何も分かってない癖しやがって好き勝手言いやがって・・・」という妙な被害者意識が醸成されるのはアクティブ・パッシブ問わずファンドマネージャーに共通した現象だ。

ファンドマネージャーになる人種というのは、もともと定められたゲームのルールの中でのパフォーマンスの優劣を競うことに喜びを見出す傾向が大きい気がする。良く言えば「職人的なスペシャリスト」、悪く言えば「局所最適化しかできない専門バカ」だ。そのため、顧客のニーズを把握し、関係者と調整してゲームのルールを構築する仕事に対する意識が希薄な傾向があるように思う。

しかし、インデックスマネージャーにとって核となるのは、ゲームのルール構築のスキルだと思う。この辺の感覚が根付くには、まだまだ時間が必要なのだろうか。

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リターンリバーサルとランダムウォーク(2)

(前回の続き)

アルゴが普及する以前でも、前述のような執行方法は人の手によって取られているのだが、私は正直なところ、この方法を聞くたびに違和感を感じてしまう。この執行手法は、以下のような前提を置いているからだ。

・マーケットが前日比で高く始まった場合は、その反動で株価が下がる。
⇒だから執行を後ろに伸ばす。
・マーケットが前日比で安く始まった場合は、その反動で株価が上がる。
⇒だから執行を前倒しにする。

要は短期的な株価変動にリターンリバーサルの前提を置いているのだ。株価にリターンリバーサルの傾向があることを一概に否定はしないのだが、それってちゃんとデータで検証してた上で前提に置いてるんでしたっけ?という疑問と、そもそもインデックスファンドの運用哲学と、リターン・リバーサルを前提とすることって整合的でしたっけ?という疑問を抱いてしまう。短期の株価変動を説明する理屈としては、

・リターンリバーサル。株価は波打ち、平均回帰的に変動する傾向がある。
・ランダムウォーク。株価変動はランダムであり、過去の値動きと将来の値動きは独立である。

という二種類がある。どちらが正しいとか正しくないとかいう議論は神学論争になるので触れないが、少なくともインデックス運用の哲学というのは、以下のようなものだった筈。

・マーケットタイミングを取ることは不可能。そのため、手数料やインパクトコストといった合理的な努力で抑制可能なコストを抑え、できる限り相場に長く留まり、株式の長期のリスクプレミアムを享受すべき。

要はインデックス運用の哲学はランダムウォーク派と親和的なので、インパクトコストがかからない範囲で、極力速やかにポジション構築を完了させ、キャッシュを寝かせておくことで発生する機会コストを最小化するのが合理的な判断の筈だ。

これと同様の理由で、私はドルコスト平均法もどうしても好きになれない。

ちなみに、ISが上記のようになっているのは、こんな理屈っぽい理由ではなく、以下のような①②のような不幸なケースが発生した場合、まだ②の方が「分散執行しました」と顧客説明がし易い、という理由も大きいと思う。

①高く始まった寄付で一気に購入した後、マーケットが下落して、その日の高値で一点買い。
②寄付が高く始まったので、1日かけて分散執行した。結果、日中も株価は上昇し続け、結果として寄付直後で買った方が傷は浅かった。

個人的に私は、戦略や哲学がしっかりと練れていれば、戦術はシンプルに表現できる。凝った戦術が必要なケースというのは、戦略立案段階で失敗している証だ。戦術で凝るのは局所最適でしかない、と考える傾向がある。

サラリーマン(特に若手)は、大上段に振りかぶって、正論だが身も蓋もないことを言うより、与えられた権限の範囲内でディテールにこだわって仕事をした方が評価される傾向があると思うので、私のこの傾向はサラリーマンファンドマネージャーとしては明らかにマイナスだと思う。

ただ、成人してからだとこういう根本的な性質は変わらない・・・ので、こういう傾向が活きる場なり職種なりを探すことの方が建設的なんだろう、と思っている。

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リターンリバーサルとランダムウォーク

インデックスファンドに大規模な資金流入があった場合は、原則速やかに株式を購入してエクスポージャーと取ることになる。エクスポージャーを取る方法は、

①流入した資金を使って直接現物を購入する。
②流入した資金分の先物を一旦購入してヘッジをし、後日先物を外して現物に乗り換える。

①の場合、速やかに現物株式を購入してファンド構築を完了できるというメリットがある反面、追投の規模が大きい場合は一気に購入するとインパクトでマーケットを崩してしまい、不利な価格で約定してしまうというデメリットが存在する。

一方、②の場合、先物は現物と比較して流動性があるので、速やかなポジション構築が可能な反面、先物から現物に乗り換える(EFP取引=Exchange of Futures for Physicals)際に証券会社にコストを支払う必要がある、一時的に先物を保有した場合、現物と先物の価格の乖離でファンドのTEが上昇する、等のデメリットがある。

ちなみに余談だが、最近のような相場下落時には、

・インデックスファンドへの資金流入が活発になり先物売り・現物買いのEFP取引を機関投資家がやりたがる。
・一方で、EFP取引の相手方(先物買い・現物売り)となる証券会社は、リスク抑制のために現物の在庫を減らしている。(日本の裁定取引の残高は現在歴史的な低水準)また、在庫が無い場合は、EFP取引を受けた後マーケットで反対売買をしてポジションを解消することになるが、昨今のボラタイルな市場環境だとポジション解消時のリスクが大きい。

という二重の要因により、現物買いのEFP取引コストはかなり高水準となっている。

資金流入があった場合には、2/19の引値基準、といったように特定の日付の終値を基準に資金が投入され、その終値を基準としてパフォーマンス評価がされるので、①の直接現物購入の場合は、極力その基準の価格からずれないように購入する必要がある。

その際に、IS(インプリメンテーション・ショートフォール)というトレーディングの手法を使用する。最近は微妙にアルゴリズムトレーディングが流行(という程のものでもないか)しているので、証券会社によっては結構凝ったアルゴリズムで執行することが可能だ。概略は以下の通り。

・短期で一気に執行してしまうと、上述のインパクトコストが増加してしまう。
・一方で、執行を分散して時間をかければかけるほど、価格変動のリスクが上昇する。
・そのため、インパクトコスト、価格変動リスクを最小化するように執行。

ちなみに、凝ったアルゴリズムの場合、以下のようなことをする。(2/19引値基準で2/20にISで執行する場合)

・現時点の市場価格が2/19の引値よりも高い場合(前日のアメリカが上昇して、寄付が高く始まったような場合)、執行期間を後ろ倒しにしてタイミング分散して執行。
・現時点の市場価格が2/19の引値よりも低い場合は、インパクトコストが高くならない程度に速やかに執行。

(長いので次回に続く)

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確信を持って余計なことはしないという戦略

人間は『同額の利益による満足』よりも『同額の損失による不満』を2倍以上強く認知する、などということが行動ファイナンスあたりの書籍で良く書かれているが、インデックス運用を担当しているとこのことを実感することが多い。

インデックス運用はコモデティであり、顧客は運用のクオリティ(トラッキングエラー等)よりもコスト(信託報酬)に対する関心が高いので、インデックスマネージャーとしては極力運用プロセスを合理化して信託報酬低減に努める・・・のがあるべき姿だ。

しかし、現実問題としては、信託報酬は我々のようなPCの前に一日中座っている世間ずれした専門職が与り知らぬところで、営業上の複雑な事情により決定される。そのため、インデックスマネージャーは、自分達でコントロール可能な運用のクオリティを上げるべく、日々地道な努力をしている。そして、昨年よりもコンサル評価が上がったの下がったのと言って一喜一憂している。

ただし、世の常として、自分が興味を持っているほどには他人は自分のやっていることに興味を持ってくれないものだし、加えて大半の顧客はインデックスファンドのクオリティには興味がない(従って営業担当も興味を持たない)ので、結果的に「あいつらはどうでもいいような細かいことに拘って・・・」と後ろ指を指されることになる。

とはいえ、資産規模の大きな年金の顧客であれば、パフォーマンスが数bp違うだけで、金額にすると結構な額の差が出てくるので、先進的な顧客の場合、結構運用の細かな部分にまでチェックが入る。通常の感覚だと、「細かな部分にまで突っ込みが入って大変だ」ということになるのかも知れないが、インデックスマネージャーの場合、自分達の専門性をアピールする数少ない機会とばかりに、口では面倒だと言いつつも、結構喜々として説明資料を作ったりしている。

このクオリティを上げる努力としては、以下のようなものがある。

・大規模なベンチマーク変更時のリバランスを工夫する。
・ベンチマークに含まれている倒産リスクの高い銘柄を除外する。
・ストックレンディングのパフォーマンスを向上させる。
・ファンドへのキャッシュフローがあった場合に、トレーディングの方法を工夫する。

これらは突き詰めると結構奥が深く、詳しい人間が見ると上手いか下手かははっきりと差が分かるのだが、いかんせん数字(ファンドのパフォーマンス)ではあまり差がつかない。そのため、ざっくりやっても手間をかけても数字が変わらないのであれば、人件費というコストをかけている分だけ手間をかける方が経済合理性がない、と言われると正論なだけになかなか反論が難しい。

尚、日本に特有の傾向のようなのだが、顧客はファンドで保有する銘柄が倒産することを嫌う傾向がある。インデックスファンドの場合、1000銘柄以上に分散して投資するので、一定数倒産する銘柄があるのは当然だ。ファンド全体でリスク分散がなされていれば、倒産銘柄の保有をいちいち気にする必要はない、という姿勢が経済的には合理的なのだが、この説明では通用しない。

経済合理的な観点ではなく、受託者責任の観点から、倒産懸念のある銘柄をモニタリングしていないのはけしからん、という発想だ。(受託者責任ってなんだよ・・・。経済合理性を追求するのがファンドマネージャーの責任じゃないのか・・・と思うこともあるが。)

話が逸れたが、こういう傾向があるので、日本のインデックスファンドは、完全にベンチマーク通りに銘柄を保有するのではなく、倒産リスクの高い銘柄を除外するのが一般的だ。その際に、

①同業他社がみな保有していた倒産銘柄を自社だけ保有していなかった。
②同業他社がみな非保有だった倒産銘柄を、自社だけ保有していた。

というケースを比較すると、①のプラスの効用と②のマイナスの効用を比較すると、圧倒的に②のマイナスの方が大きい。そのため、同業他社との競争、という観点からすると、他社と異なる戦略を取ってリスクを取るよりも、他社動向を横目で見つつ、平均的な戦略を採用し続けた方が明らかに有利だ。

運用上の工夫をしても数字に表れにくい&顧客は利益よりも損失に敏感、という上記の傾向を考えると、余計なことはせずに大きく負けないようして、後は競争相手が余計なことをして脱落するのを待つ、というのが最も合理的な戦略となる。業界の著名ななアクティブ運用のマネージャーも近いことを言っていたので、インデックス運用だけでなく、年金運用全般に当てはまる傾向なのかもしれない。

退屈な戦略と言ってしまえばそれまでだが、人間は「他人より秀でたい」「人と違うことをして注目されたい」という欲求があるので、それに逆らって余計なことをしないのは、かなりの精神的な抑制が必要だ。

長期の資産運用で一番重要なのは、投資の知識や技術ではなく、自制心なのかもしれない。

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インデックス運用者のキャリアパス(3)

ポートフォリオ構築能力、一般的にファンドマネージャーのスキルと聞いてまず連想するのがこれだと思う。ただ、インデックスマネージャーの場合、ポート構築時に必要とされるスキルはアクティブのそれとはやや(だいぶ?)異なっている。

教科書的な整理になるが、アクティブマネージャーのポート構築の手順は以下のような感じとなる。(アクティブの経験はないので、あくまでもイメージ。)

①リサーチにより、個別銘柄の期待リターンを求める。

②過去の値動きをもとに、個別銘柄のリスクを求める。

③個別銘柄を組み合わせて、リスク/リターンの効率が良い銘柄の組み合わせを考える。

④売買時のコストを考慮して、実際のトレードの計画を立案する。

会社によって役割分担は異なるだろうが、成熟した業界の常として資産運用業界でも門分化の流れが進んでいるため、ある程度規模の大きな運用機関では①をアナリスト、③をファンドマネージャー、④をトレーダーが担当しているのが普通だと思う。②については、クオンツ運用に強い運用会社であれば独自のリスクモデルを持っていることもあるかも知れないが、普通はBarra社のリスクモデルを使用して終了なのではないか。

建前としてはFMのコア業務は③ということになるのだろうが、定性アクティブのファンドの場合、ターゲットとするファンドのTEには大分幅を持たせており(対ベンチマークで3%~10%とか)さほど厳格なリスクコントロールをする必要がないことや、そもそもアクティブのFMは定量分析には興味がない(或いは意味がないと馬鹿にしている)ケースが多い。そのため、自分の相場観で銘柄を選んでポートを組んで、最後にBarraで推定TEを計って大体数字に違和感がなければ終了、という感じなのではないか。

クオンツ系のアクティブファンドの場合、定性アクティブよりも厳格なリスク管理が要求されるため、③の部分に独自のノウハウがあるとアピールするケースが多い。そのため、リスク/リターンの最適化ロジックを自前で持っているケースも多いと思う。

やはり、定性アクティブのFMが圧倒的に力を入れているのは①の銘柄選択だろう。FMのスタイルや会社によって、ちゃんとアナリストの推奨を元にポートを組んでいるケースもあれば、アナリストの話なんぞ全く聞かずにFMが自分の相場観で銘柄を選んでいるケースまで色々あるとは思うが、この辺の役割分担についてはセンシティブな部分ですので部外者が立ち入るのは止めておきます(笑)

ちなみに④については、トレーディングが好きなFMの場合は結構相場を見ながらあれこれ執行方法を考えるケースもあるにはあるが、もの凄く執行が困難な低流動性銘柄でもない限りは、トレーディングではさほどパフォーマンスに差がつくわけではないので、特段興味がない(或いは面倒なオペレーションはやりたくない)というのが主流なのではないか。

何となくの印象だが、アクティブマネージャーの興味は、以下のような感じとなっている。

銘柄選択>リスク管理>オペレーション(=コスト管理)

当然、これは個人や会社によっても異なるので、安易な一般化は慎まなければならないが、この不等号は運用フロントでの職種の暗黙の序列として見ることもできると思う。

アナリスト・アクティブFM(銘柄選択中心)のステイタスが高くて、その次にクオンツ系(リサーチもするけどリスク管理中心)が来て、その次にインデックスFM(リスク管理・オペレーション中心)が来て、トレーダー(オペレーション中心)が来る・・・といった感じだ。

上述の仕事の特徴をまとめると、以下のようになる。

                  パフォーマンスへの寄与    合理的な努力でコントロール可能
銘柄選択               大                                          小
リスク管理              中                                          中
オペレーション         小                                          大

パフォーマンスへの寄与が大きい仕事ほどステイタスが高い、というのは運用フロントという職種の性質を考えると当然と言えば当然かもしれないが、一方でパフォーマンスへの寄与が小さいものほど合理的に制御可能というわけだ。

資産運用をビジネスとして考えた場合、規模の大きな運用機関が銘柄選択を自社の競争力の原泉にするのは厳しいものがある。銘柄選択は組織としてノウハウを蓄積するのが困難な、俗人的な能力だし、例え優秀な運用者でもパフォーマンスは非常に不安定だ。こうしたボラの高い能力を前面に押し出すのは、経営上リスクが大きい。また、優秀な運用者はほぼ例外なく職人系の人材なので、縛りの多い大企業よりも、ヘッジファンド等の小回りの利くところで自分の思うようにやりたいと考える傾向があり、人材の引き留めが困難だ。

運用会社の経営としては、

・プロダクトのラインナップを拡大。(商品開発力は組織的なノウハウ蓄積が馴染む)

・パフォーマンスは、勝たなくてもいいから手堅く負けない。(リスク管理・コスト管理を徹底)

・あとは営業+コンサルでの顧客へのパフォーマンス以外のサービス力を向上。

という戦略の方が明らかに合理的だと思う。商品開発力+リスク/コスト管理能力、営業力は全て組織でのノウハウ蓄積が可能だし、合理的な努力と結果の相関も高い。

銘柄選択とか運用力とかいう非常に曖昧なものを徹底的に磨き上げてブランドイメージを確立するという戦略で成功している運用会社(フィデリティやキャピタル)もあるが、現在の総花的な日本の運用会社がそちらに舵を切るのは至難の業だと思う。

ポートフォリオ構築の話からかなり話が逸れてしまったが、今後、運用フロントでのリスク管理/コスト管理系職種の地位は相対的に向上していくと考えている。

そして、その二つの能力を高い水準で兼ね備えているのがインデックスマネージャーなのだ・・・と結ぶと、強引且つわざとらしいが、これが、運用フロントでのヒエラルキーの中で数年間悩み続けて出しだ、現時点での結論だ。

自分の職種に誇りを持つ、ということは口で言うほど容易いことではないが、こうして世間のステイタスや社内でのヒエラルキーに依るものではない、自ら悩んで見出した誇りというのは案外長続きするのではないかと思っている。

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戦略的であれ

投資関連の職種に就いている人間であれば、誰しも一度は大投資家と呼ばれる人々の伝記や、投資スタイルについて記載した本を読み漁った経験はあると思う。

投資のスタイルは多様なので簡単にパターン化はできないのだが、敢えて強引に分類すると、人並み外れて成功した投資家には以下の2パターンの人種がいると思う。

・価格の一時的な歪みや収益機会をいち早く見つけ、他人に先んじて鞘を抜く短期投資家。銀行や証券会社の自己勘定のディーラーなどは典型だが、投資銀行などでいち早くビジネスチャンス(カモ)を見つけ、短期で荒稼ぎして、凡人が群がってくる頃にはいち早くExitするような人種もこのカテゴリーだろう。相手とwin-winの関係を構築し富を分け合うのではなく、ゼロサムゲームで下手くそな奴や知識のない奴から富を巻き上げる。

・企業の超長期の成長性に賭けたり、マクロ経済の大局的な流れを予測して、数十年というスパンで資金を投下する長期投資家。この人種は一旦自分が信じてポジションを取ったら、あとはもう短期の相場変動には見向きもしない。バフェットやジム・ロジャースあたりを例に挙げると分かりやすいかもしれない。

大投資家として認知度が高い人物は後者のタイプが多い気がする。その理由付けとして、

・ゼロサムゲームの場合は、短期的に勝つことはできても、数十年という長期に渡って勝ち続けるのは不可能。

・長い目で見て最後に笑うのは、そうした投機的な投資家ではなく、長期での資本の提供により経済の発展に寄与する長期投資家なのだ。

という説明がされることがあるように思うが、

・投機系の投資家は何よりも自分の手のうちを知られるのを嫌がるので、そもそも表舞台には出てこないので知名度のある人物がいない。

・投機系のストラテジーは寿命が短いので、投機で成功するには、引き際が非常に重要になってくる。そのため、そもそも長期で相場を張り続けなければならないような奴は下手くそだ。上手い奴はさっさと稼いでアーリーリタイアしている。

という事情もあると思うので、どちらが成功しやすいかは一概には言えない。

だた、対極的に見える両者だが、自分のスタイルを愚直に貫く一貫性と、果敢にリスクを取りに行く姿勢は共通しているように思う。彼等は間違っても分散投資などという単語は口にしない。

以前、あるディーラーが以下のようなことを言っていた。

「トレードの方法はなんでもいい。とにかく、大きくリスクを取って、それをある程度の期間継続していればいつかは勝てる。だた問題は、勝つまでやらせて貰えるかだ。」

重要なのは、一貫性を持ってリスクを取り続け、且つ損切り等の守りのスキルを磨いて、できる限り長く相場にとどまり続けること、ということだろうか。

これを読みかえると、「戦略的であれ」ということと同義だと思う。

小手先の戦術に拘泥しているうちは成功はないということか。

一貫性と果敢にリスクを取る姿勢。口にすると身も蓋もない精神論だが、これほど実行するのが困難なこともない・・・と思う。

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ベンチマークの構造と見えないコスト

なんとなく会社の帰り道に思い出した、2年半くらい前のベンチマークイベント。以下を読んで、面白い!!と思えた方は、是非今度酒を酌み交わしましょう。

思い出しながら書いているので、細部のディテールが異なっている場合はご容赦下さいあと、用語は意図的に平易にしているので、それは合併じゃなくて完全子会社化だろうとか、そういうツッコミもご容赦下さい。(マニアックすぎるな・・・。)

■TOPIXのベンチマーク変更ルール

・東証2部⇒1部に指定変更があった場合、その銘柄は指定日の翌月末にTOPIX組み入れとなる。例えば、1/20に東証2部から1部にステップアップした銘柄は、2月末まではTOPIX外の東証1部銘柄となる。これは、1部で流通し始めてから1か月ほどインデックスファンドへ購入の猶予期間を与え、需給の逼迫を避けることが目的。

・合併による株式交換でA社が上場廃止になる場合(要は倒産などではなく、コーポレートアクションで上場廃止になるような場合)は、その銘柄は上場廃止日にTOPIXから除外。ちなみに倒産などの場合は、しばらく整理ポストで売買された後上場廃止となるが、ベンチマークからは上場廃止を待たずに早々に除外される。

■事態

・A社(東証1部)がB社(東証2部)に吸収合併されるため、8月末で上場廃止。上場廃止とほぼ同タイミングで、A社株主には親会社であるB社株が一定の交換比率で割り当てられる。

・TOPIX採用銘柄のA社を保有していたインデックスファンドには、採用外のB社株が割り当てられる。ベンチマーク外なので、素直に考えるとB社株は売却しなければならない。
・東証は合併の1か月後の9月末にB社を東証2部から1部に指定変更する旨を発表。(東証1部銘柄と2部銘柄が合併したのだから、規模的には1部銘柄の条件は満たしているので、これ自体は妥当な判断。)

・そして、B社のTOPIX組み入れは、9月末に実施する旨も同時に発表。

・・・当時若かった私は、引け後の夕下がりにこのリリースを見て、思わず「バッカじゃねえの」と呟いてしまった。若気の至りである。

この変更方法だと、忠実にベンチマークにトラックするためには、8月末に株式交換でB社株を割り当てられたら速やかに一旦売却し、1か月後のTOPIX組み入れ日に再び買い戻す、というオペレーションを実施することになってしまう。

最終的には保有しなければならない銘柄を、ベンチマークのテクニカルな調整のためにわざわざ反対売買しなければならない。売買すれば、当然売買手数料は取られるわ、Ask-Bidは抜かれるわ、マーケットインパクトはかかるわで、コストがかかる。

売買回転率を極力抑えてコストを抑制するのは、インデックスファンドに求められる主要な努力だ。そのインデックスファンドのベンチマークとして利用することを想定しているTOPIXのような指数も、当然回転率を抑制するように設計されて然るべきだと思うのだが、なんとなく「1部指定のときは1か月開ける」という前例を踏襲してしまったようなのだ。

小さな銘柄だったと記憶しているので、継続保有しようが反対売買しようが経済効果としては大した違いはなかったと思うが、こうしたベンチマークに追従するための売買はタイミングがまるわかりなので、投機の格好の餌食になってしまうというデメリットもある。そのため、影響の大小はさておき、こうしたベンチマークの変更方法については神経を尖らせておく必要がある。

尚、東証の担当方の名誉のために付け加えておくと、上のケースは2部の会社が1部の会社を吸収するという非常にレアなケースであり、ああいうちょっとお役所的な組織ではいろいろしがらみも多く、苦肉の策であったであろうことが推測される。

ちなみに、多分当時結構問い合わせ・苦情その他があったのだろう(私も東証に問い合わせの電話をしました)、今は改善されてこういった変更はしない筈である。

インデックスファンドへの投資というと、どうしても信託報酬などのコストに目が行きがちではあるが、そもそもファンドがトラックする対象のベンチマークの設計次第で、経済効果はかなり違いが出てくる。信託報酬のように直接見えるコストではないため意識しにくいが、こうした見えないコストも長期で見るとかなり運用のパフォーマンスに影響を与える。

このベンチマークの構造とみえないコストについては、色々な事例があり実証研究もあったりするので、また機会を見つけて考えてみたいと思う。

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インデックス運用には価値観や美意識がないか

一年近く前の記事ですが、こんなものを発見。

■インデックス運用には価値観や美意識はない--澤上篤人 さわかみ投信代表取締役(東洋経済オンライン)
http://www.toyokeizai.net/business/interview/detail/AC/a592674800488bda407f7bf5eda6229c/

アクティブのファンドマネージャーとはやはり分かり合えないのかな・・・と少し複雑な気分になった。インデックス運用に対する評価としては良くあるもので、ここまで直截的にではないにしろ、近いことは定期的に言われる。

あと、言われて傷つくのは「インデックス運用っていうのは、客の代わりに面倒なことをしてあげて報酬貰う仕事でしょ」的な評価。要は、技術ではなく手間の対価として金もらってんだろ、と、遠まわしに付加価値が低いと言われている。職種間のこうした序列意識は、どの世界にもあることだし、えてして発言者本人のコンプレックスの裏返しだったりするものなので、華麗にスルーするのが大人な対応なのだろう・・・が、僕は子供なので傷つきます。だからあんまり言わないでやって下さい。

・・・と、話が逸れた。

この記事が掲載されている時点で既に下げ相場に突入しているので、営業上強気の発言をする必要があったのかも知れない。事情はさておき、こういう言われ方をするのは気分のいいものではないけど、主義主張は人それぞれなので、文句を言ったり反論したりするために取り上げたわけではない。

ちなみに、下げ相場時には相対的にインデックスファンドの評価が上がる。逆に上げ相場の時は、こんないい相場のときに何インデックスなんて持ってんだよ、となる。この辺は完全にうろ覚えの聞きかじりだが、この背景としては、

・上げ相場でベンチマークに勝つことの方が、下げ相場でベンチマークに勝つことよりも容易。そのため上げ相場時には多くのアクティブファンドがベンチマークをアウトパフォームする。
・下げ相場時には、「何十%も下がってんのに、その上こんなに手数料払うのかよ」という心理的抵抗感が倍増する。こういう心理状態のときに、「いやいや、対ベンチマーク比で1%も勝ってますから・・・。」と言っても焼け石に水。

というものがあるようだ。

また話が逸れたが、この記事を読んだとき、「投資の技術や判断能力がない」ではなく、「価値観や美意識がない」という評価のされ方が、インデックスマネージャーとしてはやや新鮮だった。インデックス運用も知名度が向上して、技術と経験が必要な運用専門職だと、ひょっとしたらアクティブの皆さんも理解してくれるようになったのかも知れないと好意的に受け止めすらした。(勘違いだ。)

冷静に思いなおしてみると、良くある「インデックス運用はフリーライダーだからけしからん」的意見の一形態なのだが、「価値観や美意識(=運用哲学)」という掴みどころのないものが批判というか議論の対象になるあたりが、(長期の)資産運用業界を象徴する現象だと思う。

才能や努力と結果の相関が高い分野、行動に対して結果が速やかにフィードバックされるような分野では、上記のような曖昧なものが議論の対象となることはあまりないだろう。重要なのは結果が出ているか否か、それだけだ。短期のディーリングの世界では、長期投資よりは明らかに能力(注:努力ではない)と結果の相関が高く、且つ結果がすぐ出る。そのため、結果が出せなくて避難されることはあっても、「美意識が云々」というような批判をされることは絶対にないと思う。

資産運用業界で、「運用経験年数」なるものがやたらと重視されるのも、他にファンドマネージャーの能力を定量的に評価できるまともな尺度がないことによるものだろう。

そう考えると、自分は何と曖昧な世界に飛び込んでしまったんだと思う。自分の子供には、将来はもっと努力と結果の相関が高い職種に就いてもらいたい・・・と切に願う。

だが、努力が適切に報われないかもしれない、そうした不確かな状況だからこそ先が見えなくて面白いんじゃないか、と思えなくもない。それに、資産運用のためのインフラを社会(大袈裟だが)に提供している、という公共性を感じることができる点は、今の職種のいいところだとも思う。

総合的に考えると、まあまあいい職種なんじゃないか、と思うことにした。

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インデックス運用者のキャリアパス(2)

独断と偏見だが、インデックス運用者に必要なスキルを3つ挙げてみる。

(1)事務処理能力/事務企画能力
(2)ポートフォリオ構築能力
(3)コンサルティング能力

まずは(1)について考えてみる。

採用するベンチマークにもよるが、通常インデックスファンドは千数百銘柄を保有しているため、売買時の事務コストが大きい。また、保有銘柄が多いため、必然的に保有銘柄のコーポレートアクション関連の事務処理も多い。また、顧客はインデックスファンドの売買で資産間のエクスポージャー調整を実施するので、キャッシュフロー対応の売買も頻繁実施する必要がある。

この頻繁に発生するオペレーションを正確に実施するのが、若手のインデックスマネージャーの主な仕事となる。そして与えられたオペレーションをつつがなくこなせるようになると、事務フローの効率化や、VBA等を利用した手元ツールの作成、大規模なシステム構築にユーザーとして参加して業務要件定義を実施、といった仕事にアサインされるようになる。

これらは、投資というよりはインフラ構築に属する類の仕事だ。EXCELやらVBAやらでデータハンドリングするのが好きな人にとっては違和感のない仕事内容なのだが、個別銘柄を定性的に分析して投資対象を決めて・・・といったことがやりたかったり、投資理論などに興味を持ってクオンツをやりたいと言って運用会社に就職した若手などは、自分の志望と現実の仕事内容のギャップに苦しむケースが少なくない。(アクティブマネージャーやクオンツでも、若手の仕事は事務作業中心ではあるのだが、やはり職種柄処理しなければならない作業量は相対的にかなり多い。)

インデックス運用のセクションで一目置かれる程度の事務処理能力/事務企画能力を身につければ、アセットマネジメント関連の職種であれば比較的潰しがきくので(営業上の建前としては、各運用会社ともに自社の運用力を強調するが、実態としては運用会社はインフラ構築の色彩が強い業態だと思う。)、例え希望通りの配属でなかったとしても、数年頑張ってみる意味は十分にあると思う。

また、アクティブFMの場合は、経験豊富でも、運用の能力が高くても(何をもって運用能力が高いとするかは、非常に定義が難しいが。)、それがパフォーマンスを保証するわけではない非常に運の要素が強い職種だが、事務処理能力/事務企画能力については、能力と結果の相関が非常に高い。そのため、努力が適切に報われるという点では健全だと思う。

一方で、こうした処理能力が高いと、中途半端に重宝がられて雑務が増える、というデメリットもある。自分が目指すキャリアがインフラ構築系の職種ではない場合、目の前の仕事に追われてやりたいことができず、フラストレーションが溜まるリスクもある。どの業界・職種でも言えることではあるが、「与えられた仕事をきっちりこなす」ことと、「自分のキャリアにとってはプラスにならないことはきっちりと拒否する」ことのバランスをとることが重要思う。

この(1)の能力を一通り身に付けた後に、(2)(3)の応用的な仕事をだんだん振られるようになってくる。この段階になってくると、徐々に仕事への満足度も上がってくることになる。(・・・と思う。)

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インデックス運用者のキャリアパス

日本でインデックス運用を専門で担当するファンドマネージャーが生まれてからせいぜい10年程度しか経っていないのではないかと思う。それ以前は、アクティブ運用を担当するFMが片手間に運用していたり、アクティブFMの下っ端が修行も兼ねて担当する、といったパターンが主流だったのではないか。

アメリカなどでは、もう少し歴史が古く、インデックス専業の運用会社がいくつも存在しており、インデックス運用者のキャリアパスももう少し確立されている印象だ。(インデックス専業と言っても、完全に専業ではなく、各社共にピュアなインデックスよりもフィーの取れるエンハンストインデックスやクオンツアクティブも手掛けてはいる。そういう意味では、プロセス運用専業、というのが正確かも知れない。)

歴史の浅い職種の性として、キャリアパスが十分に確立されていないため、新人のインデックス運用者の育成方法に悩んだり、私のように一通り基礎的なインデックス運用のノウハウを身につけた若手~中堅層が、今後のキャリア形成について悩むというケースが多いように思う。

インデックス運用者に必要なスキルセットについては十分に整理しきれていないため、組織として体系的なスキルを取得させる教育制度は確立されてはおらず、OJT中心となる。

アクティブのFMの場合、「相場観」などと呼ばれる暗黙知の取得が職業柄重要であり、この種の暗黙知は体系的な教育で身につけるというよりは、経験豊富な上司・先輩から盗んで身につけるものなので、OJT中心の教育は理にかなっていると思う。

ただ、インデックス運用の場合、そもそもの運用哲学として透明性や再現可能性がアクティブよりも重視される運用スタイルなので、形式知を体系的に取得する機会が多くても良いように思う。

ステレオタイプな表現だが、アクティブ運用は「アート」な側面重視、インデックス運用「サイエンス」な側面重視という傾向がある。サイエンスの取得には、キャリアの初期段階での体系的な形式知の取得が不可欠だ。

また、OJT中心の場合、師匠の技をコピー⇒その後その技を自分なりに発展させる、という手順で育つことになるが、師匠が必ずしもインデックス運用者として必要なスキルをバランス良く身に付けていないケースも多いため、弟子のスキルセットも偏ってしまうリスクがある。

私より上の世代のインデックス運用者の経歴を見てみると、

・アクティブFM出身
・クオンツ出身
・バックオフィス(証券事務担当)出身

といった経歴の方が主流のようだ。外資系などでは、金融系SE・ITコンサル出身の方も結構いる印象だ。分野の創成期には当然その分野の専門家というのは存在しないので、近傍領域から人を引っ張ってくることになる。そのため、そういった方はどうしても出身領域に偏った知識・スキルを有することになってしまう。これは仕方のないことだと思う。

とはいえ、我々のような、キャリアの初期段階でこの業界に参入した第二世代以降は、インデックス運用者に必要なスキルセットをきっちり定義し、主体的にそれを身につける努力をしないと生き残っていけない・・・という危機感を感じる。

では、インデックス運用者に必要なスキルセットとは何か。

長くなるので、今回は一旦ここで切るが、この点をしっかりと整理することで、上記で出てきたもうひとつの問題である、

「基礎的なインデックス運用のノウハウを身につけた若手~中堅層が、今後のキャリア形成について悩む。」

という問題に対する答えもおぼろげながら見えてくるように思う。

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インデックス投資ナイト

「インデックス投資ナイト」なるイベントが1/10に開催されたそうだ。

インデックス投資を勉強・実践するブロガー達によるイベント・・・とのこと。
批評家の山崎元氏のブログで発見。

http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/0199ff2a4664bff5eb0bd56008a04a4b

パネルディスカッションには上述の山崎氏の他、内藤忍氏など資産運用業界では名の通った人物が参加しており、思いの他豪華だった。

私自身、インデックス運用のファンドマネージャーをやっているのだが、

・インデックスファンドは低コストで透明性の高い商品で、顧客の長期的な資産形成にとっては有益な商品だ。少なくとも、既存のアクティブファンドよりも低コストな分だけ優位性がある。

という思いがある反面、

・一般的にはまだまだ、「ベンチマーク通り運用してるだけで、特段ノウハウなんていらないんでしょ?」という視線を感じることが多い。投資というよりは顧客の資産形成のためのインフラ構築、という色彩が強いので、仕事内容が事務作業中心で地味だ。アクティブのファンドマネージャーと比較して、報酬のアップサイドが限られている。(その分、運用成績による報酬のブレは少ないが・・・。)

という現実的な不満もそれなりにある。

そのため、こうしたイベントが開催されたことを知り、自分の仕事の意義も少しずつ世の中に浸透してきていることを実感して、明日からいつもより少し気分良く仕事に臨めるような気がした。

ちなみに、インデックス運用を極めようとすると、

・徹底した合理化による手数料の引き下げ。

・商品ラインナップの拡充。

という方向性で攻める必要がある。ただし、日本の運用会社ではインデックス専業の運用会社はなく、同じ会社で手数料の高いアクティブファンドも取り扱っているのが普通だ。

そのため、上記の方法でインデックス運用に注力すると、どうしても自社内で報酬の高いアクティブファンドからインデックスファンドへの乗り換えが発生し、短期的には収益が減少してしまうという問題が発生してしまう。

日本の投資信託の手数料は高すぎる、というのは業界内の人間にとっても、少し資産運用について知識のある個人にとっても最早常識となっている。そのため、もう少しインデックスファンドが普及しても良いように思うが、上記のような構造上の理由があるため、なかなか思うように普及しないのが現状なのだろう。

上記のような背景を踏まえ、山崎氏はブログで、

・日本では、インデックス運用で大きなプレゼンスを持つ運用会社がこれから登場する余地が十分ある。

と述べている。生命保険業界でも、シンプルで低コストな商品提供を売りにしたネット生保(ライフネット生命保険)が登場して話題を呼んでいるが、保険業界と同様の構造が資産運用業界にもあるのだと思う。

ファンドの運用、という観点でみると、やっぱりインデックス運用よりはアクティブ運用の方がファンドマネージャーとしてはやっていて絶対に楽しい。ただし、視野を広げてビジネスの観点でインデックス運用を見てみると、色々な可能性があり、結構面白い分野なんじゃないかと考えている。

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